情報掲載日:2025/08/05
【医師監修】腰痛に湿布は効果的?種類と使い分け、注意点まで徹底解説

慢性的な腰痛や急なぎっくり腰など、私たちの生活に身近な“腰の痛み”。その対処法として真っ先に思い浮かぶのが「湿布」ではないでしょうか。薬局でも気軽に手に入る湿布ですが、正しい種類選びや使用法を理解することが、より効果的な痛みの緩和につながります。

本記事では、湿布の基礎知識から、種類ごとの特徴、注意点、さらに湿布以外の改善方法までを分かりやすく解説します。

1.湿布の効果

湿布の効果

湿布は、皮膚に貼ることで有効成分が患部に浸透し、炎症や痛みを抑える外用薬です。市販の湿布には、「非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs)」と呼ばれる成分が含まれていることが多くあります。これは、痛みや炎症を引き起こす「プロスタグランジン」という物質の生成を抑える働きがあり、炎症反応を鎮めたり、痛みの伝達をブロックしたりすることで、痛みを軽減してくれます。

また、湿布には以下のように異なる剤形があります。

  • パップ剤(厚手タイプ):水分を多く含み、肌に優しいのが特徴。
  • テープ剤(薄手タイプ):粘着力が高くはがれにくいため、日中の活動時にも使いやすいのが特徴。

2.湿布の種類と使い分け

湿布には大きく分けて「温感湿布」と「冷感湿布」の2種類があります。それぞれに適したタイミングや症状があるため、使い分けが重要です。

温感湿布

温感湿布は、貼るとじんわりと温かさを感じる湿布です。トウガラシ由来のカプサイシンや、ノニル酸ワニリルアミドといった温感成分が配合されており、皮膚を刺激して血行を促進し、筋肉のこわばりを和らげる効果が期待されます。

温感湿布が向いているのは、以下のような症状です。

  • 慢性的な腰痛
  • 神経痛や関節痛
  • 筋肉の疲労やこり、緊張

温感湿布は、ぎっくり腰など急性期の強い炎症時には温める効果によりかえって血流がよくなってしまい、腫れや痛みを助長する原因となるので注意が必要です。

冷感湿布

冷感湿布は、貼るとスーッとした清涼感が得られる湿布です。メントールやハッカ油といった冷感成分により、皮膚の感覚神経を麻痺させ、痛みを一時的に緩和します。また、冷感湿布には炎症や腫れを抑える効果も期待できます。

冷感湿布が向いているのは、以下のような症状です。

  • 急性の腰痛(ぎっくり腰など)
  • 打撲や捻挫
  • ズキズキとした拍動性の痛み
  • 熱をもった腫れ

炎症や腫れが落ち着いた後も冷感湿布を貼り続けると、皮膚が荒れてしまったりする可能性があるため、症状が落ち着いたら運動療法などのケアに切り替えるようにしましょう。


3.湿布を使用する際の注意点

湿布を使用する際の注意点

湿布は市販でも手軽に手に入りますが、誤った使い方をすると思わぬトラブルを引き起こすことがあります。安全に使用するために、以下の点に注意しましょう。

皮膚への刺激に注意

湿布に含まれる成分によっては、肌に刺激を感じたり、かぶれてしまったりすることもあります。特に肌が弱い方や、アレルギー体質の方は注意が必要です。かゆみ、赤み、発疹、水ぶくれなどの症状が出た場合は、すぐに使用を中止し、医師や薬剤師に相談してください。

初めて使う湿布の場合は、腕の内側など目立たない場所に小さく貼って、肌に異常が出ないか試す「パッチテスト」を行うのがおすすめです。また、傷口や湿疹がある場所、粘膜、目の周りへの使用は避けましょう。

長時間貼り続けるのは避ける

湿布は決められた用法・用量を守って使うことが大切です。長時間貼り続けたり、頻繁に貼り替えたりすると、皮膚への負担が大きくなり、かぶれなどの肌トラブルの原因になることがあります。製品に記載されている使用回数や貼る時間を必ず守りましょう。

内服薬との飲み合わせに注意

湿布に含まれるNSAIDsなどの成分は、痛み止めとして内服薬にも使われていることがあります。他の痛み止めや風邪薬などと一緒に使うと、成分が重なってしまい、知らないうちに過剰摂取になる可能性も。

特に、喘息などの持病がある方、妊娠中・授乳中の方、小さなお子さんが使用する場合は、必ず医師や薬剤師に相談してから使いましょう。

就寝時の使用には注意が必要

寝ている間は無意識に動くため、湿布がずれて効果が半減する可能性があります。

就寝前に貼る場合は、はがれにくいプラスター剤を選ぶか、衣類やテープなどで補強するなどの工夫をしましょう。もし皮膚に異常を感じた場合は、すぐに使用を中止してください。


4.湿布以外の腰痛の改善方法

湿布以外の腰痛の改善方法

湿布はあくまで痛みを和らげるための一時的な対処法であり、腰痛の根本改善には、医療機関での適切な治療が重要になります。ここでは、代表的な治療法を紹介します。

物理療法

物理療法は、電気や熱、光などの物理的なエネルギーを用いて、痛みや炎症を和らげ、身体の機能を改善する治療法です。

・温熱療法

ホットパックや超音波、低周波などを用いて患部を温めます。温めることで血行が促進され、筋肉の緊張が和らぎ、痛みを軽減する効果が期待できます。主に慢性的な腰痛や、筋肉のコリからくる痛みに有効です。

・電気療法

低周波や中周波で神経を刺激し、痛みの伝達を妨げたり、筋肉をほぐしたりします。神経痛や慢性的な痛みに用いられます。

・けん引療法

腰椎を専用の機器でゆっくりと引っ張ることで、椎間板への圧力を軽減したり、神経の圧迫を和らげたりする治療法です。椎間板ヘルニアなどによる神経症状がある場合に適用されます。

装具療法

装具療法は、コルセットなどの装具を用いて、腰を安定させたり、正しい姿勢をサポートしたりする治療法です。ぎっくり腰などの急性期の痛みを和らげるために使用されますが、長期間の使用は腰回りの筋力低下を招く可能性もあるため、必要な期間のみ使用するのが望ましいとされています。

理学療法(リハビリ)

理学療法は、運動療法や手技療法を通じて体の機能を回復させ、痛みの軽減を目指す治療法です。腰痛の根本的な原因にアプローチできるため、特に慢性化した腰痛や、何度も繰り返すタイプの腰痛に効果が期待できます。

・運動療法

腹筋や背筋、股関節まわりの筋肉を強化し、腰を支える体幹を安定させます。また、筋膜リリースやマッサージなども関節の可動域を広げたり、筋肉のこわばりを緩和したりするのに効果的です。

・姿勢指導

座り方や立ち方、荷物の持ち方など、日常生活で腰を痛めにくい動作を学びます。


5.湿布を正しく選んで、腰痛と上手に付き合おう

腰痛は多くの人が悩まされる身近な不調のひとつですが、症状に合ったケアを行えば症状の軽減につながります。特に湿布は手軽にできるセルフケアとして有効で、症状に合わせて使い分ければより高い効果が期待できます。

一方で、腰痛の原因が筋力低下や姿勢の悪さ、骨の異常などの場合、湿布だけでは十分な改善は難しいケースも。気になる痛みが続く場合は、整形外科や専門医に相談し、理学療法や装具療法なども検討してみましょう。