
「朝起きると、くしゃみが止まらない」「さらさらとした鼻水が続き、仕事や家事に集中できない」。このような症状がある場合、アレルギー性鼻炎の可能性が考えられます。アレルギー性鼻炎は、季節を問わず多くの人が悩まされている身近な疾患です。症状が長引くと、睡眠不足や集中力の低下などを招き、日常生活の質にも影響します。
本記事では、アレルギー性鼻炎が起こるメカニズムをはじめ、症状が悪化しやすい人の特徴、症状を緩和するための具体的なセルフケアまで、詳しく解説します。
1.アレルギー性鼻炎はなぜ起こる?
アレルギー性鼻炎とは、空気中に浮遊する花粉やハウスダストなどの原因物質(アレルゲン)を吸い込み、それが鼻の粘膜に付着することで起こるアレルギー反応のひとつです。
アレルゲンが鼻の粘膜に侵入すると、身体はそれを「異物」と判断し、特定の抗体を作り出します。この抗体は、体内にある「マスト細胞」と結びついた状態で存在します。その後、同じアレルゲンが再び体内に入ってくると、マスト細胞が反応し、ヒスタミンなどのアレルギーを引き起こす物質を放出。これらがヒスタミン受容体と結合することで、くしゃみや鼻水、鼻づまりといった、アレルギー性鼻炎特有の症状が現れます。
2.アレルギー性鼻炎の症状

アレルギー性鼻炎の症状は、風邪の初期症状とよく似ているため、自己判断が難しいことがあります。しかし、いくつかのポイントを押さえることで、ある程度見分けることが可能です。
アレルギー性鼻炎の特徴
- 鼻水: 水のように透明で、さらさらしている
- くしゃみ: 発作的に何度も続けて出る
- 鼻づまり: 両側の鼻が詰まったり、左右交互に詰まったりする
- その他の症状: 目のかゆみや充血、涙目に加え、のどや皮膚のかゆみを伴うことが多い
風邪との違い
風邪の場合、鼻水は発症初期こそ透明なことがありますが、数日経つと黄色く粘り気のある状態に変化します。また、アレルギー性鼻炎ではほとんど見られない、発熱、のどの痛み、せき、たん、悪寒といった全身症状を伴う点も大きな違いです。
鼻の症状だけでなく、発熱の有無や体調の変化、症状の経過をあわせて確認することが、正しく見分けるためのポイントとなります。
3.通年性と季節性の違い
アレルギー性鼻炎は、原因となるアレルゲンの種類や飛散・存在する時期によって、大きく「通年性」と「季節性」の2つのタイプに分けられます。
通年性アレルギー性鼻炎
近年の住宅は気密性が高く、室内の温度や湿度が一定に保たれやすいため、冬場でもダニが繁殖しやすい環境になっています。そのため、季節を問わず症状が現れることがあります。
特に、大掃除や掃除機がけ、布団を動かしたときなど、ホコリが舞いやすい場面では、症状が強く出やすい傾向があります。
季節性アレルギー性鼻炎(花粉症)
特定の季節に症状が現れるタイプで、一般的に「花粉症」と呼ばれます。日本では約60種類の植物が花粉症の原因になるとされており、実際には一年を通して何らかの花粉が飛散しています。
代表的な花粉には、以下のようなものがあります。
- 春: スギ、ヒノキ(日本で最も多く、広範囲に飛散する)
- 夏: シラカンバ(主に北海道)、カモガヤ、ハルガヤなどイネ科
- 秋: ブタクサ、ヨモギ、カナムグラ(空き地や河川敷に多い)
- 冬: 地域によっては1月末からスギ花粉が飛び始める
このように、原因となる花粉や時期は人によって異なるため、症状が出やすい季節や環境を把握しておくことが大切です。
4.花粉症が悪化しやすいケース
同じ環境にいても、花粉症の症状が強く出る人と、比較的軽く済む人がいます。こうした違いには、体質や生活環境、日頃の生活習慣など、いくつかの要因が関係しています。
遺伝的要因
アレルギー体質には遺伝的な影響があると考えられています。家族にアレルギー性鼻炎のほか、喘息やアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患の既往がある場合、花粉症を含むアレルギー性鼻炎を発症しやすい傾向があります。
住環境
意外に思われるかもしれませんが、自然の多い地域よりも都市部の方が症状が悪化しやすいとされています。
アスファルトやコンクリートで覆われた都市環境では、地面に落ちた花粉が土に吸収されにくく、風や人の動きによって何度も舞い上がります。その結果、花粉にさらされる機会が増え、症状が強く出やすくなると考えられています。
ライフスタイルの乱れ
過労や睡眠不足、強いストレスが続くと、自律神経のバランスが乱れ、免疫機能が過敏になります。
また、偏った食生活や加工食品の摂取が多い状態が続くと、腸内環境が乱れ、アレルギー反応を助長する可能性も指摘されています。
5.アレルギー性鼻炎の重症度

アレルギー性鼻炎の重症度は、鼻水やくしゃみの回数、鼻づまりの程度などを基準に分類されます。
| 程度および重症度 | くしゃみ発作(※)または鼻水(※※) | ||||
|---|---|---|---|---|---|
| ++++ 21回以上 |
+++ 11~20回 |
++ 6~10回 |
+ 1~5回 |
- +未満 |
|
| ++++ 一日中完全につまっている |
最重症 | ||||
| +++ 鼻閉が非常に強く、口呼吸が1日のうち、かなりの時間あり |
重症 | ||||
| ++ 鼻閉が強く、口呼吸が1日のうち、ときどきあり |
中等症 | ||||
| + 口呼吸は全くないが鼻閉あり |
軽症 | ||||
| - 鼻閉なし |
無症状 | ||||
※1日の平均発作回数
※※1日の平均鼻かみ回数
(鼻アレルギー診療ガイドライン2024年版)
特に、鼻をかむ回数が20回を超える場合や、夜も眠れないほど鼻が詰まっている場合は「最重症」に分類されます。このレベルになると、市販薬だけでの対処は難しく、仕事のパフォーマンスも著しく低下します。早急に専門医を受診し、適切な処方薬の使用を検討しましょう。
6.アレルギー性鼻炎を緩和する方法

アレルギー性鼻炎対策の基本は、「アレルゲンを体内に入れないこと」と「粘膜のバリア機能を守ること」です。
鼻うがいをする
鼻の粘膜に付着した花粉やハウスダストを洗い流す「鼻うがい(鼻洗浄)」は、セルフケアとして有効です。
真水(水道水)で行うと鼻の奥がツーンと痛むため、必ず「生理食塩水(0.9%程度の塩水)」を使用しましょう。体温に近い36度前後のぬるま湯にするとさらに刺激が少なくなります。市販の専用ボトルや洗浄液を使うと、初めての方でも安心です。
室内を加湿する
空気が乾燥すると鼻粘膜の防御機能が低下し、アレルゲンが侵入しやすくなります。湿度は50%前後、室温は20~25℃を目安に保つことが理想的です。加湿器の使用はもちろん、濡れたタオルを干すだけでも効果があります。
マスク・眼鏡を装着する
花粉症用マスクを正しく着用することで、吸い込む花粉量を約3分の1~6分の1に減らせるとされています。眼鏡も、通常タイプで約4割、防御カバー付きであればさらに高い効果が期待できます。
また、ウールなどの毛羽立った素材は花粉が絡みつきやすいため、表面がツルツルしたナイロンやポリエステル素材のコートを選ぶことをおすすめします。帰宅時は玄関に入る前に、衣服についた花粉をしっかり払い落としましょう。
市販薬を利用する
症状がつらい場合は、市販薬も選択肢のひとつです。くしゃみや鼻水の症状がつらいときは抗ヒスタミン薬、特に鼻づまりがひどい場合には点鼻薬が有効です。
ただし、薬の種類によって「眠気が出やすいもの」「授乳中でも使えるもの」などがあるため、購入前に薬剤師や登録販売者に相談すると安心です。
7.正しい知識と対策でアレルギー性鼻炎の症状を軽減しよう
アレルギー性鼻炎は、アレルゲンに対する免疫の過剰反応によって起こります。まずは、アレルゲンを体内に入れない工夫を心がけることが基本です。
症状が通年性か季節性かを見極め、加湿や鼻うがいなど日常的なセルフケアを続けましょう。セルフケアや市販薬で改善しない場合は、舌下免疫療法などの治療も選択肢となるため、早めに医療機関を受診することが大切です。正しい知識と対策で、つらい鼻の症状を軽減していきましょう。



