情報掲載日:2025/08/12
【医師監修】秋の花粉症の特徴は?春花粉との違いや自宅でできる対策、受診の目安を解説

「花粉症」と聞くと、スギやヒノキが猛威を振るう春を思い浮かべる方が多いかもしれません。しかし、実は秋にも花粉は飛散しており、春とは異なる植物が原因でつらいアレルギー症状に悩まされることがあります。

本記事では、意外と知られていない秋の花粉症について、春の花粉症との違いや、原因となる代表的な植物、そして自宅でできる対策、医療機関を受診する目安まで詳しく解説します。

1.秋にもかかる花粉症

秋にもかかる花粉症

症状に悩まされている人は意外と多い、秋の花粉症。春に飛散するスギやヒノキといった「樹木由来」の花粉とは異なり、秋は主に「雑草由来」の花粉が原因です。

特に、ブタクサやヨモギなどのキク科の植物は代表的なアレルゲンで、都市部や住宅街など身近な場所にも多く生育しています。通勤・通学路、公園、川沿いの草むらなど、日常生活の中で目にする場所によく見られるため、知らず知らずのうちに花粉を吸いこんでいるかもしれません。

季節の変わり目に、くしゃみや鼻水、のどのイガイガなどが続くようであれば、秋の花粉症の可能性を考えてみてもよいでしょう。

春の花粉症との違い

春の花粉は粒子が比較的大きいため、鼻の粘膜に留まりやすく、くしゃみや鼻水、鼻づまりといった鼻の症状が代表的です。一方、秋の花粉は粒子が小さいため、気管支の奥まで入り込みやすく、喉のイガイガ感や咳、喘息のような呼吸器症状を伴うケースもあります。

さらに、秋は昼夜の気温差が大きく、空気も乾燥しやすいため、風邪と間違えやすいのも特徴です。症状の出方や感じ方が春とは異なるため、少しでも違和感を覚えたら早めの花粉対策を心がけましょう。

風邪・寒暖差アレルギーなどとの違い

秋の花粉症は、風邪や寒暖差アレルギーと症状がよく似ているため、見分けがつきにくいことがあります。風邪の場合は、発熱やのどの痛み、全身のだるさなどが見られ、通常は数日〜1週間で自然に回復します。一方、花粉症では熱が出ることはほとんどなく、さらっとした透明な鼻水、目のかゆみ、連続するくしゃみなどが長く続くのが特徴です。

また、秋によく起こる「寒暖差アレルギー」は、医学的には「血管運動性鼻炎」と呼ばれるもので、急な気温差によって鼻の粘膜が刺激され、鼻水や鼻づまりが生じます。ただし、目のかゆみやくしゃみといった花粉症特有の症状はほとんど見られません。

これらの症状は似ているようでいて、それぞれ原因も対処法も異なります。「なんとなく風邪っぽいけれど、なかなか治らない」と感じたら、自己判断せず、早めに専門医を受診することが大切です。


2.秋花粉の原因となる植物

秋花粉の原因となる植物

秋の花粉症の主な原因となる植物は、ブタクサ、ヨモギ、カナムグラの3種類です。それぞれの特徴と飛散時期を知っておきましょう。

ブタクサ

ブタクサは、道端や空き地、河川敷などの日当たりのよい場所に群生する雑草です。草丈は50cm〜1mほどで、葉はギザギザしているのが特徴です。特に「ブタクサ」と「オオブタクサ」の2種類があり、オオブタクサは草丈が2mを超えることも。花粉は非常に軽く、風に乗って広範囲に飛散します。

飛散時期は8月〜10月で、地域によっては7月下旬から始まる場合もあります。

ヨモギ

ヨモギは日本全国に分布し、和菓子やお灸の原料としても知られる植物です。草丈はブタクサ同様に50cm〜1m程度で、葉の裏側が白い毛で覆われているのが特徴です。花粉の飛散量はブタクサほどではありませんが、強いアレルギー性を持つため、注意が必要です。

飛散時期は8月中旬〜10月で、地域によっては9月がピークになります。

カナムグラ

カナムグラはアサ科のつる性植物で、河川敷や空き地、林の縁などに多く見られます。ギザギザした葉を持ち、特に雄株から放出される花粉がアレルゲンとなります。

飛散時期は8月下旬〜10月頃ですが、地域によっては11月上旬まで続くこともあります。


3.自宅でできる花粉症対策

自宅でできる花粉症対策

秋の花粉症を軽減するには、日常生活の中での工夫が重要です。特に、花粉を「家に持ち込まない」「体内に入れない」ことを意識するだけでも、症状の悪化を防ぐことができます。

マスクやメガネを着用する

外出時には、不織布マスクや花粉対策用のメガネを着用しましょう。顔にしっかりフィットするタイプのマスクを選ぶとより効果的で、花粉の吸入や目・肌への付着をある程度防ぐことができます。また、帽子をかぶると髪への花粉の付着も防げます。

衣服や髪への付着に注意する

帰宅時には、衣服や髪に付着した花粉を玄関先で払い落とし、手洗いやうがい、洗顔を忘れずに行いましょう。帰宅後すぐに着替え、可能であればシャワーを浴びるのが理想的です。

室内環境を整える

花粉の飛散が多いとされる昼前後や夕方の時間帯には窓の開閉を控え、換気は短時間で済ませましょう。室内には、花粉除去機能のある空気清浄機を設置するのがおすすめです。

また、こまめに掃除機をかけたり、濡れた雑巾で床や家具を拭いたりすることで、室内の花粉量を減らすことができます。カーテンやソファなども定期的に掃除しましょう。

洗濯物や布団の取り扱いを工夫する

洗濯物を屋外に干すと花粉が付着しやすいため、花粉が多い時期はできるだけ部屋干しにしましょう。布団は布団乾燥機や布団クリーナーを使うのが効果的です。

鼻炎薬を使う

症状が軽いうちから市販の鼻炎薬を使用するのもひとつの手段です。近年は眠気の出にくいタイプも増えており、日常生活への影響を抑えながら症状を和らげることができます。用法用量を守って、継続的に使用しましょう。


4.医療機関を受診する目安

自宅での対策や市販薬で十分な効果が得られない場合は、早めに医療機関を受診しましょう。以下のような症状がある場合は、医師の診断を受けることをおすすめします。

  • 鼻づまりで夜眠れない
  • 目のかゆみや充血がひどい
  • ぜんそくのような咳が出る
  • 初めて花粉症のような症状が出た

医療機関では、抗ヒスタミン薬やステロイド点鼻薬などによる対症療法のほか、スギ花粉症などの適応がある場合には体質そのものの改善を目指す「舌下免疫療法」も行われます。アレルギー検査を受けることで、どの植物に反応しているのかを特定でき、より適切な治療が受けられます。


5.その不調、秋花粉が原因かも?気づきにくい花粉症に注意

秋の訪れとともに現れる体調不良の中には、花粉が原因となっているものも少なくありません。秋の花粉は、身近な草むらや道端に多く生えており、気づかないうちに体内に取り込んでしまうことも。春の花粉症との違いや、風邪との見分け方を理解し、自分に合った対策やケアを取り入れましょう。

くしゃみや鼻水、目の不快感などの症状が長く続く場合は、必要に応じて医療機関の受診も検討してください。