情報掲載日:2025/09/16
【医師監修】筋肉痛を早く治すには?原因から即実践できる効果的な治し方、予防法を解説

「久しぶりに運動をしたら、翌日になって歩くのもつらいほどの筋肉痛に…」
「大切な試合が近いのに筋肉痛がなかなか治らない」

こんな経験をしたことがある人も多いのではないでしょうか。筋肉痛は誰にでも起こる身近な症状ですが、放っておくと日常生活に支障が出ることも。しかし正しいケアを知って実践すれば、痛みを和らげるのはもちろん、回復を早めることも可能です。

本記事では、筋肉痛が起こるメカニズムから、今日からすぐに試せる回復方法、さらに予防のコツまでを分かりやすく解説します。

1.筋肉痛の症状・原因

筋肉痛の症状・原因

筋肉痛とは、運動後に筋肉に生じる痛みのことです。一般的に「筋肉痛」と呼ばれるものの多くは、運動の翌日から翌々日にかけて痛みが強まる「遅発性筋痛(ちはつせいきんつう)」を指します。

症状には、筋肉の痛みやこわばり、重だるさ、関節が動かしにくい感覚などがあります。特に、日頃あまり使わない筋肉を使ったときや、急に強度の高いトレーニングを行ったときに起こりやすいのが特徴です。

筋肉痛が起こるメカニズム

かつては「乳酸が溜まること」が筋肉痛の原因だと考えられていましたが、現在では、運動によって傷ついた筋繊維を修復する過程で起こる「炎症」が原因である説が有力視されています。

筋肉はトレーニングによって微細な傷がつき、その修復の際に「ブラジキニン」や「ヒスタミン」など痛みを引き起こす物質が放出されます。これらが筋膜(筋肉を覆う膜)を刺激することで痛みを感じるのです。

つまり、筋肉痛は単なる不快な症状ではなく、「筋肉が回復し、より強くなろうとしているサイン」とも言えます。


2.筋肉痛を早く治す方法

筋肉痛を早く治す方法

つらい筋肉痛を少しでも早く和らげたいときは、筋肉の状態に合わせて段階的なケアを行うことがポイントです。ここでは、今日からすぐに実践できる4つのステップをご紹介します。

【Step1】患部を冷やす(アイシング)

運動直後や痛みのピーク時、筋肉が熱をもったり、ズキズキと脈打つように痛んだりするのは、筋肉が炎症を起こしているサインです。この「急性期」の筋肉痛に対しては、まず患部を冷やすことが効果的です。冷やすことで血管が収縮し、炎症の広がりを抑えながら痛みを和らげることができます。

冷やす際は、氷のうや保冷剤をタオルで包み、1回15~20分を目安に患部に当てましょう。感覚がなくなったら一度外し、また痛みを感じるようになったら冷やす、を繰り返します。ただし、凍傷を防ぐため、氷や保冷剤を直接肌に当てるのは絶対に避けてください。

【Step2】血行を促進する(温める)

ズキズキした痛みが落ち着き、熱感が減ってきたら、次は体を温めて血流を良くしましょう。血行を促すことで、傷ついた筋繊維に酸素や栄養素が届きやすくなり、疲労物質や炎症の原因物質が排出されやすくなります。

入浴は38~40℃くらいのぬるめのお湯にゆっくり浸かって体を芯から温めるようにしましょう。また、痛みが心地よい範囲で、ゆっくりと筋肉を伸ばす静的ストレッチと、手のひらで優しくさすったり軽く揉んだりするマッサージを組み合わせるのがおすすめです。

強く押したり無理に伸ばしたりするのは避け、あくまで心地よく血流を促すイメージで行うのがポイントです。また、血流障害や糖尿病性神経障害などの慢性疾患がある方は控えましょう。

【Step3】筋肉痛に効果的な栄養素を補給する

筋肉の修復には、食事で体の内側からサポートすることも重要です。日々バランスのとれた食事を心がけるのが第一ですが、必要に応じてサプリメントを活用するのもよいでしょう。特に、次の栄養素を意識して摂取することをおすすめします。

  • タンパク質(アミノ酸)
    筋肉の主成分であり、傷ついた筋繊維を修復するために不可欠です。肉や魚、卵、大豆製品、乳製品などを毎食取り入れましょう。特に、魚肉たんぱく(かまぼこなど)やBCAA(分岐鎖アミノ酸)は吸収が早く、運動後の摂取に最適です。
  • ビタミンB群
    タンパク質の代謝を助け、効率的にエネルギーを作るサポートをします。疲労回復には必須の栄養素です。豚肉、うなぎ、レバーなどに豊富に含まれます。
  • ビタミンE・C
    抗酸化作用が強く、運動で生じた活性酸素から筋肉を守り、炎症を抑える働きが期待できます。ナッツ類や緑黄色野菜、果物などを積極的に摂取しましょう。

【Step4】十分な睡眠をとる

筋肉痛の回復において、最も効果的なのが睡眠です。寝ている間に分泌される「成長ホルモン」が、傷ついた筋肉の修復や成長を助けてくれます。

かつては「夜10時~深夜2時が成長ホルモンのゴールデンタイム」と言われていましたが、最近の研究では、就寝時刻よりも、眠り始めの90分間にいかに質の良い深い睡眠(ノンレム睡眠)をとれるかが重要だと考えられています。

寝る前のスマートフォン操作を控えたり、カフェインを避けたり、部屋を暗く静かにしてリラックスできる環境を整えたりすることで、より深い睡眠が得られます。忙しい日でも、睡眠時間を確保することが筋肉痛を早く治すための土台となります。


3.筋肉痛の予防法

筋肉痛の予防法

つらい筋肉痛は、なってから治すよりも、できれば未然に防ぎたいですよね。日常生活での習慣や運動前後のちょっとしたケアを意識するだけで、筋肉への負担を減らし、翌日のつらい痛みを防ぐことができます。ここでは、誰でも簡単に取り入れられる2つの予防法をご紹介します。

日頃から適度に運動する

筋肉痛の大きな原因の一つは、普段あまり使わない筋肉に急な負荷がかかることです。日常的に体を動かしていれば、筋肉が急な負荷に驚くことが少なくなり、筋肉痛の発生を抑えやすくなります。

ウォーキング、ジョギング、軽い筋トレ、ストレッチなど、週に2~3回でも良いので運動を習慣にしましょう。こうした軽い運動を続けることで、筋肉の柔軟性や関節の可動域が保たれ、血流も良好な状態を維持できます。その結果、体が運動に適応しやすくなり、筋肉痛になりにくい体づくりが可能です。

いきなりハードな運動を始める必要はありません。「エレベーターの代わりに階段を使う」「通勤・買い物で少し歩く」など、日常生活の中で少しずつ体を動かすことから始めてみるのがおすすめです。

準備運動&整理運動を行う

運動のパフォーマンスを高め、怪我を防ぐためには、運動前後のケアも欠かせません。また、短時間の実施でも筋肉痛の予防に効果的です。

  • 準備運動(ウォーミングアップ)
    運動前には、ラジオ体操や軽いジョギング、その場での足踏みといった「動的ストレッチ」で、体を大きく動かしながら筋肉を温めましょう。準備運動を行うことで血流が良くなり、筋肉や関節がしなやかになり、運動に適した状態になります。
  • 整理運動(クールダウン)
    運動後は、急に動きを止めるのではなく、使った筋肉を20~30秒かけてゆっくりと伸ばす「静的ストレッチ」で整理運動を行いましょう。筋肉の緊張をほぐし、心拍数を落ち着かせながら、疲労物質の排出を促すことで、翌日の筋肉痛を大幅に軽減する効果が期待できます。

4.筋肉痛は予防とケアで早く回復!今日からできる簡単習慣

筋肉痛は誰にでも起こる身近な症状ですが、ちょっとした工夫で回復を早めることができます。さらに、日頃から軽い運動やストレッチを習慣にしておくと、筋肉痛になりにくい体を作ることも可能です。小さな習慣の積み重ねが、つらい筋肉痛から解放される近道になります。

また、数日経っても痛みが強い場合、日常生活が困難になるほどの痛みがある場合、関節の腫れや発熱がある場合は、早めに医療機関を受診しましょう。