
足首は体重を支え、歩行やジャンプなどの動作を可能にする重要な役割を担っていますが、その分、使いすぎやケガ、加齢などにより痛みやすい部位の一つです。軽度であれば時間の経過とともに痛みは引きますが、もし症状が長引く場合は医療機関への早めの受診をおすすめします。
本記事では、足首が痛い原因や考えられる病気をはじめ、病院での治療法とセルフケアの方法、病院を受診すべき目安について詳しく解説します。
1.足首が痛くなる原因は?

足首は、すねの骨と呼ばれる「脛骨(けいこつ)」と「腓骨(ひこつ)」に加え、「距骨(きょこつ)」が組み合わさって構成されています。骨の間には軟骨があり、さらに靭帯が骨同士をつなぐことで、足の関節はスムーズに動作することが可能です。
とくに靭帯のおかげで、私たちは歩いたり走ったり、ジャンプするなどのさまざまな動作ができますが、その分、日常的に負荷がかかりやすく、痛みも生じやすくなります。
足首の痛みの主な原因には、長時間の立ちっぱなしや、急な長時間の運動などで足首を使いすぎるほか、加齢、足首の構造における先天的な問題、高いヒールやサイズの合っていない靴を継続的に履くことなどが挙げられます。また、痛みが長引く場合は、重大な疾患が隠れている可能性もあります。
2.足首が痛い時に考えられる病気

足首の痛みを感じると、「捻挫」を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。スポーツ中に転んだり、くじいてしまったりなど、足首をねじるような動きをした時に、靭帯が伸びすぎて損傷を受けることで痛みが生じます。軽度であれば10日ほど、重度の場合は3週間程度の治療期間が必要です。
しかし、捻挫の他にも「足首が痛い」症状の原因となる疾患には次のようなものがあります。似たような症状を持つ疾患もあるため、自己判断せず、医療機関を受診しましょう。
足関節果部骨折(あしかんせつかぶこっせつ)
足関節果部骨折は「脱臼骨折」とも言われ、跳躍や高所からの転落、足首を捻るなどで、くるぶしの骨に割れ目が入る関節内骨折です。くるぶしの部分に強い痛みや腫れ、皮下出血、発熱を伴うほか、足が外側・内側に傾くといった症状がみられ、歩行が困難になることも。
また、足首の靭帯も一緒に損傷している場合、足関節の可動域制限といった機能障害が残る可能性もあります。
変形性足関節症
変形性足関節症は、足関節のスムーズな動きを支える軟骨がすり減り、変形と痛みを生じさせる関節疾患です。軟骨がすり減る原因は、加齢によるもののほか、過去の骨折や捻挫が影響している可能性もあり、繰り返し足首にケガを負ったことのある人は変形性足関節症を引き起こすリスクが高まります。
主な症状は、足首の痛みと腫れです。発症初期は歩行時に痛みを伴う程度で、しばらく歩くと痛みは軽減しますが、長時間歩行することで再び痛みがあらわれます。また、軟骨のすり減りが進行して「骨棘(こつきょく)」と呼ばれる骨の変形が生じると、常に痛みがあり、可動範囲も狭くなります。
後脛骨筋機能不全(こうけいこつきんきのうふぜん)
後脛骨筋機能不全(PTTD)は、足首が内側に傾き、土踏まずのアーチが崩れて、扁平足障害が生じた状態です。後脛骨筋腱は足の内側のアーチを維持する役割を持っているため、損傷や軟化が起こると足のバランスが不安定になってさまざまな症状が引き起こされます。
初期症状では、足首の内側に痛みや腫れ、しびれが生じる程度で、進行すると足の外側や足首の下部にも痛みが広がり、関節炎があらわれることもあります。
アキレス腱炎
アキレス腱炎は、人間の身体で最も大きく太い腱であるアキレス腱に炎症が起こることで、痛みが生じる病気です。スポーツや長距離歩行など、走る、歩く、跳ぶ、つま先で蹴るなどの動作を繰り返し行うことが原因で発症します。
足首を動かした時や歩行時に痛みを生じ、しだいに階段や坂道の昇り降りが困難になります。また、アキレス腱やかかと部分に靴などが当たった際にも痛みを感じ、悪化すると安静時にも痛みが続くようになります。
痛風
痛風は、尿酸の結晶が関節に付着することで、関節炎を引き起こし、急な激痛を生じさせる病気です。足の親指の付け根以外に、足首や足の甲、ひざなど、足の広範囲で痛みを感じます。痛風は、女性に比べ、男性の方が発症しやすい傾向にあります。
激しい運動や肥満、飲酒習慣、油っぽい食べ物や魚卵系を多く摂取することなどが原因で発症し、腎臓の障害・尿路結石・糖尿病・高血圧・高脂血症といった合併症のリスクも高まります。
3.足首の痛みの診断方法
足首の痛みの診察は整形外科で行います。まずは医師の診察により、痛みの発生場所や程度、痛みの期間、日常生活への影響など問診を行い、実際に足を触ったり、動きを見たりして症状を確認します。
また、必要に応じて画像診断を行う場合もあります。レントゲンやMRI、CT、超音波エコーなどを用いることで、骨折や関節の変形の可能性や、軟部組織の状態、腱の損傷・炎症の有無について詳しく調べることが可能です。
4.足首が痛い症状の治療法

足首が痛い時、整形外科を受診することで、症状や病気に応じて次のような治療を受けることができます。
足首の固定
捻挫や靭帯損傷、骨折などで、足首がぐらぐらし、激しい痛みがある場合には、ギプスやサポーターで足首を固定して安静を保ちます。また、活動する際は、損傷部分に差し障りがないよう松葉杖を使用し、足首への負担を減らします。
薬物療法
炎症によるズキズキとした痛みや腫れがひどい場合には、薬物療法で対処します。非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の飲み薬や湿布で炎症を抑えるのが一般的です。
リハビリテーション
捻挫後の不安定感や慢性的な痛みへの対処、また、再発防止を目的として、理学療法士の指導のもと専門的なリハビリを受けることができます。自宅で行う場合は、ストレッチや筋力トレーニング、バランストレーニングなどが有効です。
ただし、早く治そうと無理にやることは避けましょう。痛みの程度に合わせて少しずつ、継続して行うことが大切です。
手術療法
保存療法で改善しない重度の症状や、ずれのある骨折、靭帯が完全断裂してしまった場合には手術療法が用いられます。ただし、あくまでも最終手段のため、医師と十分に相談した上で手術を行うか慎重に判断しましょう。
5.自分でできる足首の痛みの対処法
整形外科をすぐに受診できない場合は、セルフケアで足首の痛みを緩和することも可能です。ここでは、自分で手軽にできる対処法を2つご紹介します。
市販薬を使用する
足首が痛む時には、鎮痛・抗炎症効果のある「ロキソプロフェン」を含んだ市販の内服薬がおすすめです。服用後30~50分程度で吸収されるため速効性があり、市販薬の中では鎮痛・抗炎症作用に優れています。ただし、15歳未満には使用できないこと、第一類医薬品に該当するため薬剤師の説明を受けないと購入できないことに注意が必要です。
また、市販の外用薬もあるため、使いやすい方を選びましょう。塗り薬(ゲル・ローション・クリーム)は広範囲に塗りやすく、速乾性が高い一方、湿布やテープは、冷感タイプと温感タイプがあり、患部の状態に合わせて選ぶことができます。
サポーターやインソールを使用する
痛みが比較的軽度であれば、サポーターを着用して足首のぐらつきを抑えるのも効果的です。
また、かかとをしっかり支えてくれる形状のスニーカーを選んだり、靴底と足裏に隙間ができないよう「アーチサポートインソール」を仕込んだりするのもおすすめ。病院では、インソールは「足底装具」として保険適用で作成でき、足首が痛い症状に対する治療法の一種でもあります。
6.整形外科を受診すべきタイミング
「足首の痛みがなかなか引かない」「足首の痛みのせいで日常生活に支障が出ている」という方は、早めに整形外科を受診してください。とくに次のような方は要注意です。
- 痛みが強い、痛みが2週間以上続いている
- 足首がひどく腫れている
- 足首が変形している気がする
- 患部が発熱している
- 歩行が困難になっている
- 足のしびれ、感覚に違和感がある
「ただの捻挫」と思って放置しておくと、足首の痛みはどんどん悪化し、重篤な病気が隠れている場合は症状が進行してしまいます。症状を悪化させない、また改善するためには自己判断に任せず、適切な治療法のもと対処していくことが大切です。
7.足首の違和感に気づいたら早めの対処が肝心

少しでも足首に異常を感じたら、早めに医療機関を受診しましょう。適切な治療やリハビリで、足首の痛みを改善して快適な毎日を取り戻せる可能性があります。また、日頃から足首に負担をかけない靴選びやストレッチ、筋力トレーニングを習慣にしておくことで、足首の痛みを予防することが可能です。