情報掲載日:2026/01/13
【医師監修】ノロウイルスの潜伏期間は?感染時の対処法や予防策を分かりやすく解説

冬場を中心に流行し、激しい嘔吐や下痢を引き起こす「ノロウイルス感染症」。感染力が非常に強く、家庭や施設内で急速に拡大しやすいのが特徴です。特に乳幼児や高齢者がいる家庭では、急な発症に備えて正しい知識を持っておくことが欠かせません。

本記事では、ノロウイルスの感染経路や主な症状、治療法、そして日常生活で実践したい予防策について、分かりやすく解説します。

1.ノロウイルスの潜伏期間

ノロウイルスに感染してから症状が現れるまでの期間を「潜伏期間」と言います。ノロウイルスの潜伏期間は一般的に12〜48時間程度とされており、感染の翌日から翌々日にかけて突然の嘔吐や下痢などが起こるケースが多くみられます。ただし、潜伏期間には個人差があり、数時間で発症する場合や、72時間以上経ってから症状が出ることもあります。

そのため、感染源を特定する際は直前の食事だけで判断せず、2〜3日前まで遡って食事内容や接触状況を振り返る必要があります。


2.ノロウイルス(ノロウイルス感染症)の感染経路

ノロウイルス(ノロウイルス感染症)の感染経路

ノロウイルスは、わずか10〜100個程度の極めて少量でも感染する、非常に感染力の強いウイルスです。そのため、日常生活のさまざまな場面で感染が広がりやすいという特徴があります。

ノロウイルスの主な感染経路は、次の5つです。

便や吐物を介した二次感染

最も多いのが、感染者の便や吐物に含まれるウイルスが手指を介して口に入る感染です。トイレのドアノブや蛇口、共有タオルなどを通じてウイルスが広がり、手洗いが不十分な場合、家庭や施設内で急速に感染が拡大します。

嘔吐時の飛散・環境汚染を介した経口感染

感染者の嘔吐時に、飛沫や乾燥した吐物の粉じんとともにウイルスが空中に拡散し、吸い込むことで感染することがあります。至近距離での看病や、不適切な処理が行われた空間では注意が必要です。

食品取扱者を介した食品汚染

ノロウイルスに感染した調理従事者の手指を介して、調理済み食品が汚染されるケースです。飲食店や給食施設などで発生する集団食中毒では、この経路が原因となることが少なくありません。

汚染された二枚貝の摂取

カキなどの二枚貝は、海水中のノロウイルスを体内に蓄積しやすい性質があります。生食や加熱不十分な状態での摂取は感染リスクが高く、見た目や鮮度ではウイルスの有無を判断できません。

消毒不十分な飲料水の摂取

井戸水や簡易水道がノロウイルスに汚染され、適切な塩素消毒が行われていない場合、飲用によって集団感染が起こることがあります。


3.ノロウイルス感染症の主な症状

ノロウイルス感染症の主な症状

ノロウイルス感染症は、前触れなく急激に症状が現れるのが大きな特徴です。健康な成人では比較的軽症で済むことが多いものの、症状が強く出るため体力の消耗には注意が必要です。

  • 吐き気・嘔吐
    突然強い吐き気に襲われ、短時間に何度も嘔吐することがあります。特に発症初期に症状が強く、心身への負担が大きくなりがちです。
  • 下痢
    水のような水様便が繰り返し出ることがあり、体内の水分が急激に失われます。脱水を防ぐため、早めの水分補給が欠かせません。
  • 腹痛
    差し込むような痛みや、キリキリとした腹痛を伴うことがあります。
  • 発熱
    37〜38度程度の軽度な発熱がみられる場合がありますが、インフルエンザのような高熱になることは比較的まれです。

症状は多くの場合、1〜2日程度で自然に軽快します。しかし、症状が改善した後も、便中には1週間程度、長い場合は1か月ほどウイルスが排出され続けるとされています。回復後も油断せず、手洗いやトイレ周辺の消毒など、二次感染を防ぐ行動を継続しましょう。


4.ノロウイルス感染症が発生しやすい時期

ノロウイルス感染症は一年を通して発生しますが、日本では12月から1月にかけて流行のピークを迎えます。

冬に感染が広がりやすい理由として、空気の乾燥によるウイルスの拡散、カキなどの二枚貝を食べる機会の増加、そして低温環境ではウイルスが長く生存しやすいことが挙げられます。寒い時期に入ったら、症状が出てから対応するのではなく、早い段階から予防意識を高め、対策することが重要です。


5.ノロウイルス感染症の対処法

ノロウイルス感染症の対処法

現時点では、ノロウイルスに直接効果のある特効薬(抗ウイルス薬)はありません。そのため対処法の基本は、症状を和らげながら回復を待つ「対症療法」になります。

しっかりと水分補給する

対処法で最も重要なのは、脱水の予防です。嘔吐や下痢が続くと、水分だけでなく電解質(塩分など)も急速に失われます。特に高齢者や乳幼児は脱水に気づきにくく、重症化するおそれがあるため注意が必要です。

水分補給には、経口補水液(ORS)など、水分と電解質をバランスよく補える飲料が適しています。吐き気がある場合は、一度に大量に飲まず、少量ずつこまめに摂取しましょう。

止しゃ薬(下痢止め)の使用は控える

つらい下痢を早く止めたいと思っても、市販の下痢止めを自己判断で使用するのは控えましょう。下痢は、体がウイルスを体外へ排出しようとする防御反応のひとつです。無理に止めるとウイルスが腸内にとどまり、回復が遅れたり症状が長引いたりする可能性があります。


6.ノロウイルス感染症を予防するには

ノロウイルスは生存力が非常に強く、アルコール消毒が効きにくいなど、一般的な対策だけでは不十分な場合があります。感染を防御するためには、以下のポイントを徹底しましょう。

正しい手洗いを徹底する

予防の基本かつ最も重要なのが、石けんと流水による手洗いです。石けんにはウイルスを殺す作用はありませんが、汚れとともにウイルスを物理的に洗い流すことができます。

洗い方のポイント 指の間、爪の間、親指の付け根、手首まで意識して丁寧にこすり洗いしましょう。
可能であれば、手洗いを2回繰り返すことで、より確実な予防につながります。
手洗いのタイミング トイレの後、調理前、食事前、吐物や便の処理後は特に念入りに行ってください。

食品は十分に加熱調理する

ノロウイルスは熱に弱いため、加熱調理が有効な予防策となります。中心温度85〜90℃で90秒以上を目安に加熱しましょう。特にカキなどの二枚貝は、表面だけでなく中心部まで十分に加熱することが重要です。


7.冬場こそ徹底したノロウイルス対策を

ノロウイルス感染症は誰にでも起こりうる身近な感染症ですが、正しい知識と日常的な予防行動によって感染リスクを大きく下げることができます。

特に冬場は、手洗いの徹底や食品の十分な加熱といった基本的な対策を意識することが重要です。激しい嘔吐や下痢が続く場合や、脱水が疑われるときは自己判断せず、早めに医療機関を受診することが重症化を防ぐポイントです。