
体の調子を整えるミネラルのひとつ、「カリウム」。血圧の安定やむくみの解消など、健康維持に役立つことはよく知られています。一方で、どんな食品に多く含まれているか、どれくらい摂ればいいのかは意外と分からない方も多いのではないでしょうか。
本記事では、カリウムの働きや必要性、カリウムを豊富に含む食品、摂取量目安、さらに効率よく取り入れるための食事の工夫まで分かりやすく解説します。
1.カリウムの働き

カリウムは、体内に多く存在する必須ミネラルの一つで、ナトリウムに次いで多い栄養素です。成人の体には約200g含まれており、その大半は筋肉を中心とした細胞内にあります。細胞内液で主要な陽イオン(プラスイオン)として働き、生命活動に欠かせない役割を担っています。
その働きの中でも、特に次の3つは健康維持に直結する重要なものです。
- 水分バランスの維持
細胞内のカリウムと細胞外のナトリウムがバランスをとり、体内の水分量や浸透圧を調整します。 - 血圧の調整
体内の余分なナトリウム(塩分)の排出を促すことで、血圧の上昇を抑えます。 - 神経・筋肉の正常な働き
神経からの情報伝達や筋肉の収縮に関わり、不足すると脱力感や不整脈などの不調を招くことがあります。
なお、カリウムは体内で合成することができないため、日々の食事から継続して摂取する必要があります。
2.カリウムの不足・過剰摂取によるリスク

カリウムは体に欠かせない大切なミネラルですが、摂取量が不足しても過剰になっても健康に影響を及ぼす可能性があります。特に血液中のカリウム濃度は、常に適切な範囲で保たれることが重要です。
不足した場合
通常の食生活では、カリウムが大きく不足することはほとんどありません。とはいえ、偏った食事や激しい下痢・嘔吐、大量の発汗が続く場合、または一部の利尿薬を長期間使用している場合などには、体内から多くのカリウムが失われることがあります。
血液中のカリウム濃度が基準値を下回った状態は「低カリウム血症」と呼ばれ、次のような症状があらわれることがあります。
- 脱力感や筋力低下
- 食欲不振、吐き気
- 無気力、イライラ
- 不整脈
特に夏は汗とともにカリウムが失われやすいため、熱中症対策と合わせて意識的に補給することが大切です。
過剰摂取した場合
健康な人であれば、食事からカリウムを多少多めに摂っても、腎臓が余分なカリウムを尿として排出するため、過剰摂取の心配はほとんどありません。
しかし、腎臓病などで腎機能が低下している場合には注意が必要です。排出がうまくいかず体内にカリウムが溜まりすぎると「高カリウム血症」を起こすことがあり、重度の不整脈や心停止に至る危険もあります。主な症状には次のようなものがあります。
- 手足のしびれや感覚異常
- 吐き気、嘔吐
- 筋力低下
- 不整脈、頻脈
腎臓病の治療を受けている方は、カリウムの摂取量について必ず主治医や管理栄養士の指示に従うことが大切です。サプリメントを自己判断で利用するのは避け、専門家と相談しながら調整しましょう。
3.カリウムを豊富に含む食品

カリウムは特定の食品だけでなく、野菜や果物、海藻、豆類、肉や魚など、幅広い食品・食材に含まれています。普段スーパーで手に入る身近な食材から摂取できるため、さまざまな食品をバランスよく食事に取り入れることが大切です。
ここでは、特にカリウムが豊富な食品をカテゴリごとに紹介します。
野菜類
野菜、特に色の濃い葉物野菜やいも類は、カリウムの代表的な供給源です。
食品・食材 | 可食部100gあたりの含有量 |
---|---|
切り干し大根 | 3,500mg |
干し芋 | 980mg |
ほうれん草(生) | 690mg |
枝豆(ゆで) | 630mg |
にら(生) | 510mg |
果物類
果物は、調理の手間なく手軽にカリウムを補給できる優秀な食品です。朝食や間食に取り入れるのがおすすめです。
食品・食材 | 可食部100gあたりの含有量 |
---|---|
ドライあんず | 1,300mg |
ドライいちじく | 840mg |
干し柿 | 670mg |
アボカド | 590mg |
バナナ | 360mg |
藻類
日本の食卓に馴染み深い海藻類も、実はカリウムの宝庫です。味噌汁の具材や副菜として、積極的に活用しましょう。
食品・食材 | 可食部100gあたりの含有量 |
---|---|
刻みこんぶ | 8,200mg |
乾燥わかめ | 7,400mg |
干しひじき | 6,400mg |
味つけのり | 2,700mg |
豆類
大豆製品をはじめとする豆類も、優れたカリウム源となります。
食品・食材 | 可食部100gあたりの含有量 |
---|---|
きな粉(全粒大豆) | 2,100mg |
ひきわり納豆 | 700mg |
ゆであずき(缶詰) | 430mg |
肉・魚介類
肉や魚介類からもカリウムを摂取できます。特に、水分が抜けて栄養が凝縮された干物は含有量が多くなります。
食品・食材 | 可食部100gあたりの含有量 |
---|---|
干しだら | 1,600mg |
するめ | 1,100mg |
ビーフジャーキー | 760mg |
豚ヒレ(生) | 690mg |
さわら(生) | 490mg |
ただし、するめやビーフジャーキー、干物などは塩分も多く含んでいる場合があるため、食べ過ぎには注意しましょう。
4.カリウムの摂取量目安
厚生労働省が策定する「 日本人の食事摂取基準(2025年版) 」では、生活習慣病予防を目的としたカリウムの摂取目標量を、年齢や性別ごとに設定しています。健康な成人の場合は以下の通りです。
- 成人男性(18歳以上):2,500mg/日
- 成人女性(18歳以上):2,000mg/日
※妊婦・授乳婦も2,000mg/日
これはあくまで健康な成人における目安量です。前述の通り、腎機能が低下している方はこの限りではありません。ご自身の健康状態に不安がある場合は、必ず医師の指示に従って摂取量を決めるようにしてください。
5.カリウムを効率よく摂取する方法

カリウムは水に溶けやすい性質を持っているため、調理方法によっては食材に含まれるカリウムが流れ出てしまい、摂取できる量が減ってしまうことがあります。ここでは、栄養を逃さず、効率よく摂取するための3つのポイントをご紹介します。
生で食べられる食品は生で食べる
野菜や果物など、生で食べられる食材は加熱調理を避けてそのまま食べるのが最も効率的です。サラダや和え物、フレッシュジュース、スムージーなどにすると、カリウムを余すことなく摂取できます。
また、じゃがいもやさつまいものように、皮のすぐ下に栄養素が多く含まれる食材は、しっかり洗って皮ごと調理するのがおすすめです。
「ゆでる」より「蒸す・焼く・炒める」
「ゆでる」「煮る」といった調理法は、カリウムが煮汁に溶け出しやすくなります。できるだけ栄養分を残すには、水に直接触れない調理法が適しています。
具体的には、蒸し器を使った蒸し料理や、電子レンジでの加熱調理がおすすめです。また、炒め物や、オーブン・グリルを使った焼き料理なども、カリウムを効率的に摂取できます。
ゆでる場合は煮汁ごと活用する
どうしてもゆでる調理が必要な場合は、煮汁ごと食べられる料理にする工夫をしましょう。味噌汁、スープ、ポトフ、シチュー、カレーなどであれば、食材から溶け出したカリウムも余さず摂取できます。
煮物を作る際も、煮汁を少なめにしたり、煮詰めたりすることで栄養の損失を防ぐことができます。
6.カリウムを上手に摂取して、すこやかな毎日を
カリウムは、体内の余分な塩分を排出して血圧を安定させるなど、健康維持に欠かせないミネラルです。果物や野菜、豆類、魚や肉など身近な食品からしっかり摂取することができます。
ただし、腎臓に不安がある方やサプリメントを離党している方は、摂り過ぎに注意が必要です。毎日の食事でバランスよく取り入れながら、無理なく体調管理に役立てて行きましょう。