
私たちの体に欠かせない栄養素のひとつである「ビタミンE」。美容や健康を支える働きから「若返りのビタミン」と呼ばれることもあり、日々の食生活で意識したい成分です。
本記事では、ビタミンEの働きや不足・過剰摂取によるリスク、豊富に含まれる食品、1日の摂取目安量、効率的に摂るためのポイントまで詳しく解説します。
1.ビタミンEの働き

ビタミンEは油に溶けやすい「脂溶性ビタミン」に分類される栄養素です。油と摂ることで吸収率が高まり、体内の脂肪組織や肝臓に蓄積されやすい性質を持ちます。
「若返りのビタミン」とも呼ばれるビタミンEは、強力な抗酸化作用があることでも知られています。呼吸の過程で生じる活性酸素は、細胞を酸化させて体を内側からサビつかせ、老化や生活習慣病を引き起こす要因です。ビタミンEは、活性酸素から細胞を守る盾となり、体のサビつきを防ぎます。
また、血行維持に寄与する可能性が報告されているほか、抗酸化作用を通じて生殖機能の維持に関与する可能性が示唆されています。
2.ビタミンEの不足や過剰摂取によるリスク
ビタミンEは健康の維持に欠かせない栄養素ですが、不足したり過剰に摂取したりすると、体にさまざまなリスクが生じることがあります。
不足によるリスク
現代の日本において、通常の食生活を送っていればビタミンEが不足することはほとんどありません。しかし、極端なダイエットで脂質の摂取を控えている場合や、肝臓疾患・吸収不良症候群などの病気がある場合は欠乏する可能性があります。
ビタミンEが不足すると抗酸化作用が低下し、シミやシワ、くすみが現れやすくなるほか、神経や筋肉の機能障害、溶血性貧血、知覚障害などのリスクも高まります。
過剰摂取によるリスク
食事での過剰摂取はほぼありませんが、サプリメントの大量摂取には注意が必要です。ビタミンEには血液を固まりにくくする作用があるため、過剰に摂取すると出血しやすくなることもあります。特に、抗凝固薬など血液をサラサラにする薬を服用している場合は、必ず医師に相談してください。
また、近年の研究では、ビタミンEサプリメントを長期間にわたって大量に摂取すると、骨粗しょう症や男性の前立腺がん、脳卒中(特に出血性脳卒中)のリスクが高まる可能性も指摘されています。
3.ビタミンEを多く含む食べ物

ビタミンEは意外にも私たちの身近な食材に豊富に含まれています。ここでは、特に含有量の多い食品と、その上手な取り入れ方を紹介します。
種実類
アーモンド、ヘーゼルナッツ、ひまわりの種などは、ビタミンEを非常に多く含む代表的な食品です。例えば、アーモンド100gには約30mgのビタミンEが含まれ、これは成人が1日に必要とする量を大きく上回ります。
手軽な食べ方としては、無塩のローストアーモンドをおやつに数粒つまんだり、砕いたナッツをサラダやヨーグルトのトッピングに加えたりするのがおすすめ。ひまわりの種はパンやグラノーラに混ぜることで、簡単に栄養価をアップできます。
油脂類
ビタミンEは脂溶性であるため、植物油そのものに豊富に含まれています。特にひまわり油(サンフラワー油)、べにばな油(サフラワー油)、米油などは含有量が多いことで知られています。普段使いしやすいオリーブオイルにも含まれており、料理によって使い分けると効果的です。
ドレッシングとして生で使うのはもちろん、炒め物に使えば効率的に摂取できます。ただし油は光や熱で酸化しやすいため、遮光瓶に入った新鮮なものを選び、開封後は冷暗所で保管して早めに使い切ることが大切です。
魚介類
魚介類では、うなぎや鮭、サバ、イワシなどの脂がのった魚にビタミンEが多く含まれます。特にうなぎの蒲焼きは100gあたり4.9mgと豊富です。
また、鮭やサバはビタミンEに加えて、DHAやEPAといったオメガ3脂肪酸も同時に摂取でき、血流改善や動脈硬化予防に役立ちます。焼き魚やムニエルにすると油との相性も良く、吸収率がさらに高まります。
野菜・果実類
緑黄色野菜や一部の果物にもビタミンEは含まれています。特に「森のバター」と呼ばれるアボカドは良質な脂質を含み、1個あたり約3mgのビタミンEを摂取可能です。かぼちゃや赤ピーマンは、ビタミンEのほかにβ-カロテンやビタミンCも豊富で、抗酸化作用の相乗効果が期待できます。
調理法としては、かぼちゃやピーマンを油で炒めたり揚げたりすると吸収率がアップ。アボカドはサラダやディップにすると手軽です。果物ではキウイフルーツやマンゴーにも含まれており、デザートやスムージーに加えれば、彩りと栄養を同時に楽しめます。
4.ビタミンEの1日の摂取目安量

ビタミンEの必要量は、年齢や性別によって異なります。厚生労働省が定める「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、「α-トコフェロール」というビタミンEの形態における目安量で必要量が示されます。同基準で示されている具体的な目安量と耐容上限量は、下表の通りです。
ビタミンE(α-トコフェロール当量)の食事摂取基準(mg/日)
男性 | 女性 | |||
---|---|---|---|---|
年齢 | 目安量 | 耐容上限量 | 目安量 | 耐容上限量 |
18~29歳 | 6.5 | 800 | 5.0 | 650 |
30~49歳 | 6.5 | 800 | 6.0 | 700 |
50~64歳 | 6.5 | 800 | 6.0 | 700 |
65~74歳 | 7.5 | 800 | 7.0 | 700 |
75歳以上 | 7.0 | 800 | 6.0 | 650 |
妊婦 | 5.5 | - | ||
授乳婦 | 5.5 | - |
※耐容上限量は、通常の食事以外に、サプリメント等を摂取する場合の健康障害リスクを回避するための上限値です。
5.ビタミンEを効率よく摂取するポイント

せっかくビタミンEを摂るなら、少しでも効率よく体に取り入れたいもの。ここでは、吸収率を高める3つの工夫を紹介します。
油と一緒に摂る
脂溶性ビタミンのビタミンEは、油と一緒に調理・摂取することで腸の吸収率が高まります。例として以下のような摂取方法がおすすめです。
- 野菜炒めやソテーにする
例:モロヘイヤやほうれん草をオリーブオイルやごま油で軽く炒める。 - サラダにオイルをプラスする
例:パプリカやアボカドを使ったサラダに、オリーブオイルをかける。 - 汁物に油分を少し加える
例:野菜スープに少量のオリーブオイルを最後に垂らす。
ビタミンEは比較的熱に強い栄養素ですが、調理に使う油の酸化を防ぐためにも、強火での長時間加熱は避け、中火以下で手早く調理するようにしましょう。
他の栄養素と組み合わせて摂る
ビタミンEは、ビタミンCとβ-カロテンと一緒に摂ることで、抗酸化作用がさらにパワーアップします。ビタミンCには酸化によって疲弊したビタミンEを再生し、再び抗酸化作用を発揮できるようにする働きがあります。また、β-カロテンも強力な抗酸化作用を持ち、ビタミンEと協力して酸化ストレスから体を守ります。
例えば、ビタミンEを含むアボカドと、ビタミンCが豊富なパプリカを組み合わせたサラダは理想的です。こうした「抗酸化トリオ(ビタミンE+C+β-カロテン)」を意識すると、老化や生活習慣病の予防効果がより高まります。
サプリメントは慎重に使用する
ビタミンEのサプリメントは、食事で不足する分を補うためのものです。食欲が低下している高齢者の方や、食事制限をしている方など、特定の状況では有効ですが、過剰摂取には注意が必要です。推奨されている目安量を必ず守り、耐容上限量を超えないように注意しましょう。
特に抗凝固薬や抗血小板薬を服用している人は、作用が重なって出血リスクが高まる可能性があるため、必ず医師に相談してから使用を検討してください。
6.ビタミンEで体の内側から健康をサポート
ビタミンEは、強力な抗酸化作用で体を守り血行を促す栄養素です。身近な食材に多く含まれ、油やビタミンCと一緒に摂ると効果が高まります。ただし、サプリメントの過剰摂取には注意が必要です。まずは毎日の食事を見直し、無理なくビタミンEを取り入れて健やかな体を目指しましょう。