
高温多湿な梅雨から夏の季節にかけて発症することが多い「あせも」。汗腺が詰まることで発生し、かゆみや不快感を引き起こします。
本記事では、あせもの原因、効果的な治し方、そして日常生活で実践できる予防法について詳しく解説します。正しい知識を身につけて、あせもによる不快な症状を軽減し、快適な生活を送りましょう。
1.あせもができる原因は?

汗は汗腺という分泌腺から、汗管を通って排出されます。大量に汗をかいた状態をそのままにしておくと、汗に含まれる塩分やほこりなどによって、汗管が詰まってしまいます。その結果、汗をうまく排出できなくなり、皮膚に現れる湿疹が「あせも」です。あせもは、とくに汗をかきやすい高温多湿な梅雨から夏の時期にできやすくなります。
汗かぶれとの違いは?
あせもとよく似た皮膚の病気に、「汗かぶれ(汗あれ)」があります。あせもは汗腺や汗管の詰まりから起こる皮膚の炎症ですが、汗かぶれは汗に含まれる塩分やアンモニアの刺激によって、皮膚がかぶれてしまった状態を指します。
また、あせもと汗かぶれは見た目にも異なる点があります。あせもは汗管の出口にそって、ブツブツと点状に湿疹ができますが、汗かぶれは汗の出口とは関係なく、汗に触れた部分全体に面状に広がるのが特徴です。
2.あせもの症状
あせもは、次の3種類に分けられます。
水晶様汗疹(すいしょうようかんしん)
水晶様汗疹は表皮のもっとも浅いところで汗詰まりを起こした状態で、白っぽく透き通った小さな水疱が生じます。皮膚を清潔に保ち、汗をかいたらこまめに拭き取ることで通常1~2日程度で症状は落ち着くでしょう。
紅色汗疹(こうしょくかんしん)
紅色汗疹は、水晶様汗疹よりもやや深い位置で汗詰まりと炎症を起こした状態で、かゆみをともなった赤いポツポツができます。掻き壊すことで「とびひ」という細菌による感染症へ発展することがあるため、正しいスキンケアに加えて、市販の治療薬(OTC医薬品)でかゆみと炎症を鎮めることが大切です。
深在性汗疹(しんざいせいかんしん)
深在性汗疹は、表皮の最深部にできる汗詰まりです。亜熱帯地域でよく見られる皮膚疾患であり、温帯の日本ではほとんど見られません。深在性汗疹になると発汗による体温調節機能が失われるため、すぐに医療機関の受診が必要です。
3.あせもができやすい場所は?
あせもは、汗をかきやすく、かつ汗が蒸発しにくい場所にできやすい傾向があります。具体的には、以下のような部位が挙げられます。
- 首の周り
- 脇の下
- ひじの内側・ひざの裏
- 胸・背中
- お腹の周り・股の部分
- おむつの当たる部分(乳幼児の場合)
これらの部位は、汗が長時間皮膚にとどまりやすいため、あせもができやすい環境が整ってしまいます。特に、通気性の悪い衣類を着用していたり、長時間同じ姿勢でいたりすると、さらにリスクが高まります。
4.あせもができやすい人とは?

あせもは誰にでも起こりうる皮膚トラブルですが、以下のような特定の体質や年齢層の人々は、特にあせもができやすい傾向があります。
汗をかきやすい体質の人
汗をかく量が多い人は、それだけ汗腺が詰まるリスクも高まるため、あせもになりやすいと言えます。
暑がりの人、運動習慣のある人、肥満気味の人などは、一般的に汗をかく量が多くなる傾向があります。また、発熱時や体調を崩している時も汗をかきやすくなるため、注意が必要です。
敏感肌の人
敏感肌の人は、皮膚のバリア機能が低下していることが多く、外部からの刺激に弱いため、あせもができやすいと考えられます。汗の成分が刺激となったり、あせもによる炎症がより強く出たりすることがあります。
また、アトピー性皮膚炎の素因がある人も、皮膚が乾燥しやすく、バリア機能が低下しているため、あせもと合併して症状が悪化するケースがあります。
乳幼児
乳幼児は、汗腺の機能が未発達であり、体温調節機能も十分に備わっていません。大人に比べて汗腺の密度が高く、新陳代謝も活発なため、体全体で大量の汗をかきます。しかし、皮膚のバリア機能は未熟であり、少しの刺激でも炎症を起こしやすいため、あせもができやすいと言えます。特におむつの中やお風呂上りなどは注意が必要です。
高齢者
高齢者は、若い世代に比べて皮膚の機能が低下しており、乾燥しやすくなっています。また、汗腺の機能も低下しているため、体温調節がうまくできずに汗をかきやすくなることがあります。
加えて、寝たきりの方や介護を受けている方の場合、自分で体の向きを変えることが難しく、特定の部位が長時間蒸れてしまうことであせもができやすくなります。
5.あせもの治し方
先に紹介したあせもの3種類のうち、セルフケアで治すことができるのは「水晶様汗疹」と「紅色汗疹」です。かゆみが強い場合や炎症を抑えたい場合は、市販のあせも治療薬を使用するとよいでしょう。
市販薬の種類と選び方

あせもに効果のある市販薬には、軟膏やクリーム、ローション、スプレーなど、さまざまな形状のものがあります。それぞれ配合成分も異なるため、自分のあせもの状態にあった治療薬を選んで使用しましょう。
ジュクジュクした状態のあせもには、刺激の少ない軟膏がおすすめです。刺激性のあるクリームやローション、スプレータイプの使用は控えてください。
かゆみなどの症状が強い場合は、ステロイド成分配合の塗り薬を選び、炎症をしっかりと抑えましょう。とくに乳幼児はあせもを掻き壊してしまいやすいため、早い段階でおだやかな作用のステロイド外用剤を使い、かゆみや炎症を抑えてあげるとよいでしょう。
ただし、掻きむしって患部がただれたようにジュクジュクしている場合には、細菌感染症である「とびひ」に発展している可能性があります。とびひはステロイドによりさらに悪化する恐れがあるため、まずは皮膚科を受診しましょう。とびひの場合は、抗生物質の塗り薬が処方されます。
医療機関を受診する目安
あせもは多くの場合、自宅でのケアで改善しますが、以下のような場合は皮膚科などの医療機関を受診することをおすすめします。
症状が広範囲に及んでいる、または悪化している
赤みやブツブツが広範囲に広がっている、かゆみが強く我慢できない、などの場合は、適切な治療が必要です。
強いかゆみで眠れない、日常生活に支障が出ている
かゆみが続くことで睡眠不足になったり、集中できなかったりする場合は、医師に相談しましょう。
水ぶくれや膿(うみ)ができている
細菌感染を併発している可能性があります。放置すると「あせものより(多発性汗腺膿瘍)」という状態になり、痛みを伴うしこりや発熱を伴うことがあります。
発熱やだるさなど、全身症状を伴う
あせも以外の病気の可能性も考えられるため、早めに医療機関を受診しましょう。
乳幼児のあせもが悪化している
乳幼児は皮膚がデリケートなため、自己判断せずに小児科や皮膚科を受診することをおすすめします。
医師は、症状に応じてステロイド外用薬やかゆみ止めの内服薬などを処方し、細菌感染を併発している場合は抗生物質を処方することもあります。適切な診断と治療を受けることで、症状の悪化を防ぎ、早く回復することができます。
6.あせもの予防法

あせもは予防できる皮膚疾患です。ここからは、すぐ取り入れられるあせもの予防法を紹介します。
皮膚を清潔に保つ
あせもの主な原因は、汗をかきっぱなしにしていることです。汗をかいたらシャワーや入浴などで洗い流し、皮膚を清潔に保つようにしましょう。すぐに洗い流すことができない場合は、濡れたおしぼりや肌ざわりのよいガーゼ生地のハンカチ・タオルなどで、やさしく拭き取ります。
皮膚をゴシゴシ擦ったり、一日に何度も石けんやボディーソープを使って洗ったりするのは、皮膚のバリア機能を損ない、あせものリスクを高める原因です。スキンケアもなるべく刺激の少ない、保湿効果の高いものを選びましょう。
汗を吸収する衣類を着る
汗をかきやすい時期は、綿100%や麻など、吸水性・通気性に優れた素材の衣類を着用しましょう。とくに肌に直接触れる下着は、吸水性・速乾性に優れた、ベタつかない素材のものを選ぶことがおすすめです。
下着やベルトなどが当たる部分は、摩擦によりあせもができやすくなるため、できるだけゆったりとした、締め付けの少ない衣類を選ぶのもポイントです。
高温多湿な環境を避ける
適度な汗をかくことは体温調節において不可欠ですが、汗をかきすぎると、あせものリスクが高まります。エアコンや除湿器を使って、温度と湿度を調節しましょう。扇風機やサーキュレーターを活用し、空気を循環させると、より効率よく、快適な環境を作り出せます。
また、長時間同じ姿勢でいると、汗がたまりやすくなってしまいます。なるべく姿勢を変え、汗が皮膚に留まらないように気をつけてください。
7.あせもは日常生活の工夫で予防できる!
あせもは軽症であればセルフケアでも治すことができますが、重症化したり、細菌感染を起こしてとびひに発展したりすると、医療機関での治療が必要になります。
一方で、あせもは普段の生活で汗をかきっぱなしにしないように気をつけるだけで、十分に予防できる病気です。暑い季節は、いつも以上に皮膚を清潔に保つことを心がけて過ごしましょう。
工夫を取り入れながら、肌の健康を守りましょう。