
亜鉛は人体に欠かせない必須ミネラルの一つであり、健康維持に大きな役割を果たしています。しかし、体内では合成できないため、日々の食事から意識して摂取する必要があります。
本記事では、亜鉛の体内での主な働きや多く含まれる食べ物、不足した際の症状、効率よく体内に吸収させるための摂り方を解説します。
1.亜鉛の体内での主な働き
亜鉛は、体内のさまざまな代謝や細胞分裂に関わるミネラルです。亜鉛の具体的な役割としては、タンパク質の合成や遺伝子情報の伝達、細胞の新陳代謝のサポートなどが挙げられます。また、皮膚や粘膜の健康維持、免疫機能の維持、味覚を正常に保つ作用など、生命活動のあらゆるシーンで重要な働きを担っています。
一方で、亜鉛は現代の食生活では不足しがちな栄養素としても知られています。体内では作ることができないため、毎日の食事から継続的に摂り入れる必要があるのです。
1日あたりの推奨摂取量と上限量
厚生労働省が定める「日本人の食事摂取基準(2025年版)」によると、1日あたりの亜鉛の推奨摂取量は下表の通りです。
男性の場合
| 年齢 | 推奨量(1日あたり) | 耐容上限量(1日あたり) |
|---|---|---|
| 18~29歳 | 9.0mg | 40mg |
| 30~49歳 | 9.5mg | 45mg |
| 50~64歳 | 9.5mg | 45mg |
| 65~74歳 | 9.0mg | 45mg |
女性の場合
| 年齢 | 推奨量(1日あたり) | 耐容上限量(1日あたり) |
|---|---|---|
| 18~29歳 | 7.5mg | 35mg |
| 30~49歳 | 8.0mg | 35mg |
| 50~64歳 | 8.0mg | 35mg |
| 65~74歳 | 7.5mg | 35mg |
※妊婦(中期・後期)の場合は+2mg、授乳婦の場合は+3mgの付加量が推奨されています。
亜鉛の摂取量は、年代や食事内容によって異なります。食事量が少ない方や、食事内容に偏りがある方は、亜鉛を含む食品を意識して取り入れましょう。
なお、通常の食事で亜鉛を過剰摂取してしまう可能性は高くありませんが、サプリメントなどを長期間多量に使用すると、ほかのミネラルの吸収が低下し、貧血や体調不良などにつながることがあります。現在服用中の薬がある方や定期的に通院している方は、サプリメントを使用する前にかかりつけの医療機関に相談しましょう。
2.亜鉛が多く含まれる主な食べ物と含有量

ここでは、文部科学省の「食品成分データベース」を参照し、亜鉛が豊富に含まれる食べ物を紹介します。
魚介類
魚介類は、全食材の中でもトップクラスの亜鉛含有量を誇ります。
特に牡蠣は亜鉛を多く含み、生牡蠣100g当たりの亜鉛量は14.0mgです。成人の1日当たりの推奨量は7.0~9.5mgのため、可食部で約50~70gが目安となります。むき身を1個約20gとすると約3~4個分です。
むき身1個の可食部が100gある場合は、1個で推奨量を上回ります。一方、貝がら付き牡蠣の重さには貝がらも含まれるため、1個が100gあっても、可食部が100gあるわけではありません。大きさによって重量が異なるため、個数は目安として考えましょう。
| 食材名 | 100gあたりの含有量 |
|---|---|
| 生牡蠣(100gあたり) | 14.0mg |
| 煮干し(100gあたり) | 7.2mg |
| うなぎの蒲焼き(100gあたり) | 2.7mg |
| ししゃも(100gあたり) | 2.4mg |
肉類
肉類も亜鉛が豊富に含まれる食材です。特に赤身肉やレバーには、亜鉛がより多く含まれています。
| 食材名 | 100gあたりの含有量 |
|---|---|
| 豚レバー(100gあたり) | 6.9mg |
| 牛肩ロース肉・赤身(100gあたり) | 5.6mg |
| 牛もも肉・赤身(100gあたり) | 4.3mg |
| 豚肩ロース肉・赤身(100gあたり) | 3.8mg |
肉類に含まれる亜鉛は、植物性食品に含まれる亜鉛よりも吸収されやすいとされています。赤身肉は亜鉛とタンパク質を含むため、脂身の少ない肉を選ぶのも一つの方法です。
豆類・穀類・ナッツ類
植物性食品にも亜鉛は含まれており、毎日の食事に少し工夫を加えるだけで手軽に摂取できます。
| 食材名 | 100gあたりの含有量 |
|---|---|
| 高野豆腐(100gあたり) | 5.2mg |
| ひきわり納豆(100gあたり) | 1.3mg |
| カシューナッツ(100gあたり) | 5.4mg |
| アーモンド(100gあたり) | 3.7mg |
| オートミール(100gあたり) | 2.1mg |
例えば、朝食にオートミールや納豆を取り入れたり、間食(小腹が空いたとき)に素焼きのカシューナッツやアーモンドを選んだりするのが効果的です。
3.亜鉛の摂取により期待できるメリット

ここでは、亜鉛を摂ることで得られる具体的なメリットを解説します。
正常な味覚の維持
舌の表面には、味を感じるセンサ—である味蕾(みらい)という細胞が集まっています。味蕾は新陳代謝が活発で、約10日から2週間の周期で生まれ変わっています。
亜鉛は、味覚を正常に保つために必要な栄養素です。亜鉛が不足すると味蕾の働きが低下し、味を感じにくくなることがあります。まずは日々の食事から不足を防ぐことが大切です。
免疫機能の維持
亜鉛は、免疫機能を正常に保つために必要な栄養素であり、不足すると免疫機能を正常に保ちにくくなることがあります。
風邪を引きやすい方や、季節の変わり目に体調を崩しやすい方は、意識して摂取したい栄養素と言えるでしょう。ただし、必要量を超えて摂取することで免疫力がさらに高まるとは限らない点を理解しておきましょう。
髪や肌の健康維持
亜鉛は、タンパク質の合成や皮膚・毛髪の健康維持に関わります。不足すると、皮膚炎や抜け毛などがみられることがあります。
ただし、亜鉛を摂取することでニキビや肌荒れを予防できるとは言い切れません。
4.亜鉛不足で起こる主な症状
亜鉛が不足すると、味覚の低下、食欲低下、皮膚症状、抜け毛、傷の治りの遅れなどがみられることがあります。
ただし、これらは亜鉛不足以外でも起こるため、症状だけでは亜鉛不足かどうか分かりません。症状が続く場合は、かかりつけの医療機関に相談しましょう。
味覚障害・食欲不振
亜鉛不足の典型的な初期症状が、味覚の低下です。「食べ物の味が薄く感じる」「何を食べても美味しくない」「口の中に金属のような味が広がる」といった異変が生じます。味覚が鈍ると食事が楽しめなくなり、食欲不振につながる恐れもあります。
髪のパサつき・抜け毛の増加
亜鉛が不足すると髪のタンパク質合成がスムーズに行われなくなるため、髪の毛が細くなったり、コシやツヤが失われてパサついたりします。頭皮のターンオーバーも乱れるため、抜け毛が増えやすくなる原因にもなります。
肌荒れ・傷の治りの遅れ
亜鉛不足により皮膚の細胞更新が滞るため、湿疹、皮膚炎、かゆみ、カサつきなどの肌トラブルが増えやすくなります。また、怪我をした際のカサブタの形成や傷口の修復スピードが遅くなるのも亜鉛不足の特徴です。
貧血や倦怠感・免疫力の低下
亜鉛欠乏では、貧血がみられる場合があります。ただし、倦怠感や立ちくらみ、疲れやすさにはさまざまな原因があり、亜鉛不足だけが原因とは限りません。症状が続く場合は、かかりつけの医療機関に相談し、自己判断でサプリメントなどを増やさないようにしましょう。
5.亜鉛を効率よく吸収・摂取するポイント

亜鉛の吸収率は一定ではなく、摂取量、体内の亜鉛量などによって変わります。そのため、特定の食品だけに頼らず、さまざまな食品を組み合わせて摂ることが大切です。
動物性食品も取り入れる
肉や魚などの動物性食品に含まれる亜鉛は、豆類や穀類などの植物性食品に含まれる亜鉛よりも吸収されやすいとされています。肉、魚、卵、乳製品などを、豆類や穀類と組み合わせて摂りましょう。
吸収を阻害する食品・栄養素に注意する
未精製の穀類(玄米や全粒粉パン)や豆類に多く含まれるフィチン酸は、亜鉛の吸収を低下させることがあります。
ただし、玄米、全粒粉パン、豆類、ナッツ類などは、食物繊維やほかの栄養素も含む食品です。亜鉛のために避けるのではなく、肉や魚、卵、乳製品なども組み合わせ、食事全体のバランスを整えましょう。
1日3食に分けてこまめに摂取する
亜鉛は、毎日の食事から継続して摂ることが大切です。3食の中で、魚介類、肉、卵、乳製品、豆類、ナッツ類など、亜鉛を含む食品を組み合わせましょう。
6.まとめ
亜鉛は、味覚や免疫機能、皮膚・毛髪の健康維持、タンパク質や遺伝情報の代謝などに関わる必須ミネラルです。牡蠣、肉、魚、卵、乳製品、豆類、ナッツ類などを日々の食事に取り入れ、不足を防ぎましょう。サプリメントを利用する場合は、耐容上限量を超えないよう注意が必要です。



