
平熱より少し高い程度の「微熱」。はっきりとした高熱ではないため、つい放置してしまいがちですが、その不調は身体が発している重要なサインかもしれません。
本記事では、微熱が続く場合に考えられる原因や、自宅でできるセルフケアを解説します。長引く微熱に悩んでいる方は、ぜひご自身の状態と照らし合わせながらお読みください。
1.微熱とは?定義と症状
医学的に明確な定義があるわけではありませんが、一般的には37.0℃~37.9℃程度の体温を「微熱」と呼びます。ただし、これはあくまで目安であり、人によって平熱には大きな個人差があります。
年齢や性別、体質、生活リズムなどによっても異なり、36.0℃未満の人もいれば、37.0℃近くが平熱という人もいます。そのため、自分の平熱を把握しておくことが大切です。
体調が良い時に、朝・昼・晩の3回、数日間にわたって検温し、その平均値を知っておくとよいでしょう。平熱よりもおおよそ1℃高い状態が続くようであれば、それが自分にとっての微熱と考えられます。
微熱に伴う主な症状

微熱が続く時には、体温の上昇以外にも、次のような不調が現れることがあります。
- 全身の倦怠感、だるさ
- 頭痛、頭が重い感じ
- 関節痛、筋肉痛
- 食欲不振
- 軽い悪寒
これらの症状を同時に感じることもあれば、体温が高い以外に特に自覚症状がない場合もあります。なんとなく調子が悪いと感じた時は、まず体温を測ってみる習慣をつけておくと、体調の変化に早く気付くことができます。
2.微熱が続く原因

風邪のひきはじめなどに見られる一時的な微熱は、体内で免疫システムがウイルスなどの病原体と闘っている正常な防御反応です。しかし、数日から数週間にわたって微熱が続く場合は、単なる疲れや一過性の不調ではなく、身体の内部で何らかの異常が起きているサインかもしれません。
微熱が続く原因は、大きく分けて「感染症」「感染症以外の病気」「その他」の3つが考えられます。
感染症
細菌やウイルスなどの病原体が体内に侵入すると、免疫システムがそれを排除しようと働き、その過程で体温が上昇します。病原体との闘いが長引いたり、急性期が過ぎた後も炎症が治まらなかったりすると、微熱だけが続くことがあります。
- 風邪、インフルエンザ、新型コロナウイルス感染症など
こうした呼吸器感染症は、高熱などの急な症状が治まった後も、回復期に微熱や倦怠感だけがしばらく続くことがあります。 - 副鼻腔炎、気管支炎
鼻の奥にある副鼻腔や、気管支で炎症が続いている状態です。色のついた鼻水や痰、長引く咳などの症状を伴います。 - 尿路感染症(膀胱炎、腎盂腎炎など)
尿道から細菌が侵入し、膀胱や腎臓に炎症を起こす病気です。特に女性に多く見られ、排尿時の痛み、頻尿、残尿感などが出ることがあります。炎症が腎臓にまで広がると、高熱や背中の痛みを伴うこともあります。 - 結核
結核菌という細菌による感染症で、微熱が長く続く代表的な病気のひとつです。2週間以上続く咳、寝汗、体重減少、食欲不振などが特徴です。
感染症以外の病気
感染症以外にも、体の内部の異常や免疫・ホルモンのバランスが崩れることで、微熱が続くこともあります。
- 自己免疫疾患(膠原病)
本来は体を守る免疫システムが、誤って自分の正常な組織を攻撃してしまう病気の総称です。代表的なものに関節リウマチや全身性エリテマトーデス(SLE)があります。微熱のほか、関節の痛み・こわばり、皮膚の発疹、倦怠感などが見られます。 - 甲状腺機能亢進症(バセドウ病など)
甲状腺ホルモンが過剰に分泌され、代謝が活発になりすぎる病気です。常に体がエネルギーを燃やしすぎている状態となるため、微熱が続きやすくなります。ほかにも動悸、多汗、体重減少、手の震え、眼球突出などの症状が現れます。 - 悪性腫瘍(がん)
がん細胞が産生する物質によって炎症が起こり、体温が上がることがあります。これを「腫瘍熱」と呼びます。進行した胃がん、肺がん、大腸がんのほか、白血病や悪性リンパ腫といった血液のがんでも、微熱が見られることがあります。
その他
特定の病気ではなく、生活習慣や体調の変化によって微熱が続くこともあります。
- ストレス・自律神経の乱れ(心因性発熱)
強いストレスや疲労が続くと、自律神経の働きが乱れ、体温調節が上手くいかなくなることがあります。検査しても明らかな異常が見つからない場合、この可能性が考えられます。 - 女性ホルモンバランスの変化
女性はホルモンの変動によって体温が変動しやすくなります。妊娠初期や更年期障害の症状として微熱が見られるほか、月経前症候群の場合は黄体ホルモンの影響で体温が上がることもあります。 - 薬の副作用(薬剤熱)
一部の抗生物質や抗うつ薬、抗てんかん薬など、服用している薬が原因で熱が出ることがあります。これは「薬剤熱」と呼ばれ、薬を飲み始めて数日~数週間後に発熱が現れます。
3.微熱の対処法

微熱が続いているものの、他に気になる症状がなく、すぐに医療機関を受診するのが難しい場合は、まずはセルフケアで体力の回復に努めましょう。
休養する
微熱は、体がエネルギーを消耗してサインを出している状態です。無理をせず、仕事や家事の負担を減らし、リラックスできる環境を整えましょう。十分な睡眠を確保し、体をしっかり休ませることが、回復への近道です。
水分補給する
発熱時は、気づかないうちに汗などで体内の水分が失われます。脱水を防ぐため、こまめに水分を摂ることを心がけましょう。水やお茶のほか、汗で失われたミネラルを補給できる経口補水液やスポーツドリンクもおすすめです。
栄養補給する
食欲がない場合でも、体力を維持するためには栄養が必要です。胃腸に負担をかけない、消化がよく栄養価の高い食品を少しずつ摂りましょう。おかゆ、うどん、ポタージュスープ、茶碗蒸し、ゼリーなどが食べやすくおすすめです。
身体を冷やす
微熱で体が火照ってつらいときは、冷たいタオルや冷却シートで首の付け根、脇の下、足の付け根(鼠径部)などの太い血管の通る場所を冷やすと楽になります。
ただし、悪寒がして震えている場合は、体が熱を上げようとしているサインです。この場合は無理に冷やさず、毛布で体を温めるなどして対応しましょう。
4.微熱が続く場合は無理せず医師に相談を
長引く微熱は、心身の疲れから重大な病気のサインまで、さまざまな原因によって引き起こされます。症状が軽いからといって安易に考えず、ご自身の身体と向き合う良い機会と捉えましょう。まずは安静と休養を心がけることが大切です。
微熱が3日以上続いているうえに症状が悪化している、体重が減っている、激しい痛みがあるといった場合は、すぐに内科を受診してください。



