
風邪による発熱や頭痛、生理痛、歯の痛みなど、日常生活の中で突然やってくる「熱」や「痛み」。そんなとき、頼りになるのがドラッグストアなどで手軽に買える市販の解熱鎮痛剤です。
しかし、市販薬の種類は非常に多く、どれを選べば良いのか迷ってしまう人も少なくありません。「ちゃんと効くのか」「自分に合っているのか」といった不安もあるはず。
本記事では、解熱鎮痛剤の成分ごとの特徴や、症状に合わせた選び方、服用のタイミングや注意点についてわかりやすく解説します。自分に合った市販薬を選ぶ参考にしてみてください。
1.解熱鎮痛剤とは?

解熱鎮痛剤は、その名の通り「熱を下げる(解熱)」と「痛みを和らげる(鎮痛)」の2つの働きを持つ薬です。つらい発熱や痛みの症状を和らげる目的で使われます。
また、総合風邪薬にも、解熱鎮痛成分が配合されています。これらは、咳止めや鼻水を抑える成分と組み合わせて、総合的に風邪の症状をケアするよう作られているのが特徴です。市販薬であっても配合内容は製品ごとに異なるため、用途や症状に合わせて選ぶことが大切です。
2.【成分別】解熱鎮痛剤の効果

市販の解熱鎮痛剤には主に5つの成分が使われており、症状や体調に合わせて使い分けることをおすすめします。代表的な成分について、それぞれの効果と適切な使用方法を解説します。
イブプロフェン(NSAIDs)
●効果
イブプロフェンは、解熱・鎮痛・抗炎症作用を持つため、発熱だけでなく、関節痛や筋肉痛、腰痛など、炎症を伴う痛みにも効果的です。痛みをしっかりと抑えることができるため、比較的強い痛みに対して使用されます。
●注意点
胃に刺激を与えてしまう場合があるため、食後に服用するのが理想的です。胃腸の弱い人は、胃薬を併用することも検討したほうが良いでしょう。
ロキソプロフェン(NSAIDs)
●効果
ロキソプロフェンは、解熱・鎮痛・抗炎症作用を持ち、頭痛、歯痛、月経痛、関節痛など、幅広い症状に対応できます。イブプロフェンよりも効果が早く現れるため、急性の痛みにも使用されます。
●注意点
長期間の使用は胃腸や腎臓に負担をかける可能性があるため、医師の指導の下での使用が推奨されます。
エテンザミド(NSAIDs)
●効果
エテンザミドは、解熱・鎮痛作用を持つ成分で、主に頭痛や発熱、生理痛などの軽度〜中等度の痛みに用いられます。鎮痛効果が期待できる一方で、比較的マイルドな効き方をするため、日常的な軽い頭痛などに適しています。また、他の成分と併用することで相乗効果が期待されることもあります。
●注意点
副作用として胃への刺激が起こることがあるため、胃が弱い方は注意が必要です。また、小児(15才未満)のインフルエンザ患者には使用を避けることが推奨される場合があります。
アスピリン(NSAIDs)
●効果
アスピリンは、解熱・鎮痛・抗炎症作用を持ち、風邪による発熱だけでなく、筋肉痛や関節痛、頭痛、生理痛などの痛みを和らげる効果があります。
●注意点
胃への負担が大きいため、長期的な使用は避けましょう。
アセトアミノフェン
●効果
アセトアミノフェンは、解熱・鎮痛作用があり、風邪やインフルエンザなどの発熱を伴う症状に有効です。痛みを和らげるため、頭痛や筋肉痛にもよく使われます。胃腸への負担が少ないとされています。
●注意点
過剰に摂取すると肝臓に負担をかけるため、用量を守ることが重要です。
3.【症状別】解熱鎮痛剤の選び方

解熱鎮痛剤は症状に合った成分を選ぶことで、より高い効果が期待できます。ここでは、代表的な症状ごとに、それぞれに適した成分と特徴を紹介します。
風邪で熱が出たとき
風邪による発熱に使う解熱剤としては、アセトアミノフェンとイブプロフェンがおすすめです。特にアセトアミノフェンは、解熱作用と安全性のバランスに優れており、胃にやさしく、小児や高齢者でも使いやすいというメリットがあります。一方、関節の痛みや体のだるさが強く出る高熱時には、抗炎症作用もあるイブプロフェンが適している場合もあります。
生理痛でつらいとき
生理痛には、イブプロフェンやロキソプロフェンなど、炎症をしっかり抑えるNSAIDsがおすすめです。これは、生理痛の原因が子宮の収縮にともなう炎症による痛みとされているためです。ロキソプロフェンはイブプロフェンよりも効果が早く現れやすく、長時間しっかり効きます。痛みの強さや予定に合わせて使い分けるとよいでしょう。
頭痛が頻繁に起こるとき
慢性的な頭痛には、アセトアミノフェンやエテンザミドを含む鎮痛剤が向いています。これらは穏やかな作用で、日常的な緊張型頭痛にも適しているのが特徴です。また、市販薬の中にはカフェインが配合されているものもあり、鎮痛効果を高める働きが期待できます。ただし、頭痛が頻繁に起こる場合には、薬を飲み続けるのではなく、医師に相談することが大切です。
急な歯の痛みや腰痛のとき
歯の痛みや腰痛など、炎症を伴う強い痛みには、ロキソプロフェンがおすすめです。即効性と持続性の両方に優れており、医療用としても多く使われている成分です。特に腰痛のように、動くたびに支障が出るような痛みには、しっかり効いて長く持続する鎮痛剤があると安心です。
子どもが発熱したとき
お子さんが熱を出したときには、アセトアミノフェンがおすすめです。年齢に合わせた製品を選び、添付文書の指示に従って正しく使うことが重要です。ぐったりしている、熱が何日も続く、発疹があるなどの症状が見られる場合には、自己判断に頼らず、早めに小児科を受診しましょう。
4.市販の解熱鎮痛剤を選ぶ際の4つのポイント
ドラッグストアには、さまざまな種類の解熱鎮痛剤が並んでおり、自分に合ったものを選ぶのは意外と難しいものです。安全かつ効果的に使用するために、購入前にチェックしておきたい4つのポイントをまとめました。
1. 成分表示や配合量を確認する
解熱鎮痛剤を選ぶときは、まず成分表示をしっかり確認しましょう。同じ「頭痛薬」「風邪薬」といっても、含まれている成分は商品によってさまざま。「値段が安いから」「クチコミ評価が高いから」といった理由ではなく、自分の症状や目的に合った成分を選ぶことが重要です。
また、主成分の配合量も重要なポイント。どの成分がどれだけ含まれているかをきちんと把握しましょう。
2. ライフスタイルに合わせて選ぶ
解熱鎮痛剤の中には、眠気やだるさを引き起こす成分が含まれているものもあります。車を運転する予定がある方や仕事中に服用する可能性がある方は、眠気の出にくいタイプを選ぶと安心です。
また、「つい飲み忘れてしまう」「忙しくて何度も薬を飲む時間が取れない」という方には、1日の服用回数が少ない薬の方が続けやすく、生活に無理なく取り入れられます。
3. 他の薬との飲み合わせに注意する
市販薬を選ぶ際に特に注意したいのが、他に服用している薬との飲み合わせです。たとえば、市販の風邪薬には解熱鎮痛成分(アセトアミノフェンなど)が含まれていることが多く、そこに別の解熱鎮痛剤を追加すると、知らないうちに過剰摂取となってしまうことがあります。
また、サプリメントや病院で処方された薬との飲み合わせにも要注意。飲み合わせによっては、薬の効果が強く出すぎたり、逆に効き目が弱まったりすることもあります。不安なときは、購入前に薬剤師や医師に相談しましょう。
4. 持病や体質を考慮する
薬は、体質や健康状態によって合う・合わないが大きく変わります。たとえば、NSAIDsは胃への刺激が強いため、胃が弱い方にはアセトアミノフェンのように比較的やさしい成分の方が向いている場合もあります。
また、妊娠中・授乳中・小児・高齢者などの特定のライフステージでは、使用できる薬に制限があることも。特に妊娠中は時期によって薬の影響が異なるため、自己判断での服用は避け、医師や薬剤師に相談することが大切です。
体質的に薬が効きにくい方や副作用が出やすい方も、自分に合った成分や用量を見極めることが安全に薬を使うためのポイントになります。
5.解熱鎮痛剤を服用するタイミング

解熱鎮痛剤を正しく服用するには、タイミングが非常に重要です。痛みや熱が出たとき、どのタイミングで薬を服用するかによって症状の軽減度合いや体への負担も大きく変わってきます。ここでは、解熱鎮痛剤を効果的かつ安全に使うためのタイミングについて解説します。
「痛み始め」に飲むのが効果的
頭痛や生理痛など、痛みを感じたときは、我慢しすぎず、痛みの初期段階で服用するのが効果的です。痛みが強くなってからでは薬の効き目が追いつかず、つらい時間が長引いてしまうこともあります。
ただし、痛みを感じる前に予防的に飲むのはNG。薬はあくまで症状が出てから使うもの。予防的に服用しても、胃の不調や肝臓・腎臓への負担など副作用のリスクを増やすだけで、得られる効果はありません。
発熱時は「38.5度以上」を目安に
解熱剤を使うタイミングとして、よく言われる目安が、体温が38.5度を超えたとき。発熱は、体内でウイルスや細菌と戦っている自然な免疫反応でもあるため、必ずしも熱を下げる必要はありません。
ただし、熱がそれほど高くなくても、発熱による寒気・関節痛などの症状がつらいときは、体温に関係なく解熱鎮痛剤を使ってOK。無理に我慢しないことも大切です。
6.解熱鎮痛剤を服用するときの注意点

解熱鎮痛剤は効果が期待できる一方で、誤った使い方をすると健康に悪影響を及ぼす恐れがあります。安全に効果を得るために、以下のことに注意して服用しましょう。
用法・用量は必ず守る
市販薬であっても、用法・用量には明確なルールがあります。決められた分量や服用間隔を守ることは、効果を十分に発揮させるだけでなく、副作用を防ぐためにも欠かせません。
特に、小児や高齢者、妊娠中の方、持病のある方などには使用制限が設けられている場合が多く、成分によっては使用できないケースもあります。製品ごとの説明書をよく読み、自分の体調や条件に適した薬かどうかを確認するようにしましょう。
長期間の使用は避ける
解熱鎮痛剤を長期間にわたって使い続けることは避けるべきです。たとえ市販薬であっても、長期使用は体に負担をかけ、副作用のリスクを高める原因になります。
数日服用しても症状が改善しない場合、別の病気や体調不良が隠れている可能性も。自己判断での継続使用は避け、必要に応じて医師に相談しましょう。
服用は「食後」が基本
ほとんどの解熱鎮痛剤は、胃への刺激があるため、空腹時の服用は避けるべきとされています。特にNSAIDsは胃に負担がかかりやすく、空腹で飲むと胃痛や吐き気を引き起こすことがあります。食後に服用することで、胃の粘膜が守られ、副作用のリスクも軽減されます。
もし体調不良でしっかり食事ができない場合でも、おかゆやスープ、クラッカーなど消化の良いものを少し口にしてから服用するようにしましょう。
インフルエンザによる発熱にはNSAIDsを使用しない
インフルエンザによって発熱した時には、NSAIDsの使用を避けることが推奨されています。過去には、インフルエンザ患者がNSAIDsを服用した結果、重篤な副作用である「インフルエンザ脳症」が発症したケースも存在します。
インフルエンザの感染が疑わしい場合は、医師に相談して適切な薬を処方してもらうようにしましょう。
服用前後のアルコールは控える
解熱鎮痛剤を服用中の飲酒は、薬の作用に悪影響を及ぼす可能性があります。アルコールは胃の粘膜を刺激するため、胃腸障害が起こりやすくなることも。また、アルコールによって肝臓の代謝が促進されると、薬の有効成分が早く分解されてしまい効果が薄れてしまうこともあります。
特にアセトアミノフェンは、普段から飲酒習慣のある方には肝臓への負担が大きくなるため、使用は慎重に。安全な服用のためには、服薬中の飲酒は避けるのがベストです。
7.まとめ
解熱鎮痛剤は、発熱や痛みといったつらい症状をやわらげ、日常生活を少しでも快適に過ごすための強い味方です。ただし、「どの薬を選ぶか」「どのタイミングで服用するか」は、体調や症状によって異なります。
市販薬は体質や持病などによって選び方が変わるため、慎重に選ぶことが大切です。悩んだときは自己判断をせず、薬剤師や医師に相談することをおすすめします。正しい知識を持って、体調が悪いときに安心して服用できるよう準備しておきましょう。