
暑い季節に突然襲ってくる頭痛。「もしかして熱中症?」と不安になる方も多いのではないでしょうか。熱中症による頭痛は、体からの危険信号であり、放置すると重症化して命に関わるケースもあります。
本記事では、熱中症で頭痛が起きる原因をはじめ、いざという時に実践すべき応急処置や熱中症の予防法を解説します。正しい知識を身につけ、暑い季節を安全に乗り切りましょう。
1.熱中症による頭痛が起きる原因
熱中症で頭痛が起こる主な原因は、脱水に伴う脳の血流の変化です。大量の汗をかいて体内の水分や塩分が失われると、体は内臓などの重要な臓器に血液を優先して送ろうとします。これにより脳への血流量が一時的に低下します。
その後、低下した血流を補おうとして脳の血管が急激に拡張し、周囲の神経を刺激することでズキズキとした頭痛が引き起こされるのです。また、体温調節がうまくいかずに熱がこもり、脳の血管が炎症を起こすことも原因の一つです。熱中症の頭痛は、体が深刻な脱水状態に陥っているサインと言えます。
2.熱中症による頭痛が起きている時の応急処置

熱中症による頭痛は、気温が高い環境下で体内の水分や塩分のバランスが崩れ、体温調節機能がうまく働かなくなることで起こる症状です。重症化すると命に関わることもあるため、早期の発見と適切な処置が非常に重要になります。
意識がはっきりしている場合
意識がはっきりしていて、自分で水分補給ができる場合でも、悪化しないように注意深く観察しながら応急処置を行いましょう。
まずは涼しい場所へ移動
意識がある場合でも、まずは涼しい場所へ移動することが重要です。日陰やクーラーが効いた場所で体を休ませ、楽な姿勢にしてあげてください。衣服をゆるめ、体を締め付けているものを外すことも忘れずに行いましょう。
水分・塩分補給
熱中症では発汗により、大量の水分と塩分が体内から失われます。意識がはっきりしている場合は、水分と塩分を自力で補給してもらいましょう。水分と塩分(ナトリウム)を同時に補給できる経口補水液やスポーツドリンクがあればそれを、なければ水1Lに食塩1~2gを溶かした食塩水を飲ませてください。
もし吐き出してしまう場合は無理に飲ませないようにしましょう。臓器の血流減少による機能低下が疑われ、病院での点滴が必要となるため、すぐに医療機関を受診しましょう。
なお意識障害がある場合も、無理に水分を飲ませようとしないでください。気道に水が流れ込む恐れがあるためです。熱中症による意識障害が見られる場合は、すぐに救急へ連絡しましょう。
意識が朦朧としている場合
意識がはっきりしない、呼びかけに反応がない、自分で水分補給ができないなどの症状が見られる場合は、重症の熱中症が疑われます。一刻も早く医療機関での治療が必要な状態です。
救急車の要請
意識障害がある場合は、ためらわずに救急車(119番)を要請してください。熱中症の症状は急速に悪化することがあり、専門的な処置が遅れると命に関わる危険性があります。
涼しい場所へ移動
救急車を待つ間も、できる限りの応急処置を行いましょう。まずは、風通しの良い日陰やクーラーが効いた室内など、涼しい場所へ移動させることが最優先です。衣服をゆるめ、体を締め付けているものを外して風通しを良くしてください。
体の表面を冷やす
体内に熱がたまった状態が続くと、脳や臓器の機能不全につながります。涼しい場所に移動したら、体内の熱の放出を助けるための処置を行いましょう。
まずは衣服を緩めます。その後、氷枕や保冷剤、冷えたペットボトルなどで、体の表面に大きな静脈のある首、わきの下、太ももの付け根などを冷やしてください。太い血管が流れる場所を集中的に冷やすことで、効率よく体温を下げることができます。また、霧吹きや濡れタオルを使って皮膚を濡らし、うちわやタオルなどであおぐことも効果的です。
熱中症になってしまったら、なるべく早く深部体温(脳や臓器など体の内部の温度)を下げることを意識しましょう。
医療機関へ搬送
救急隊が到着したら、症状を正確に伝え、迅速な医療機関への搬送を促しましょう。また、必ず救急隊の指示に従ってください。
3.【重症度別】熱中症の症状

熱中症の症状は、日本救急医学会による「熱中症診療ガイドライン2024」において「軽症(Ⅰ度)」「中等症(Ⅱ度)」「重症(Ⅲ度)」「最重症(Ⅳ度)」の4段階に分類されています。
熱中症による頭痛は、ガイドライン上「中等症(II度)」に分類される症状であり、原則として医療機関の受診が推奨されます。ここでは、頭痛以外にも起こり得る、重症度別の代表的な症状を紹介します。
軽症
意識障害のない軽度な熱中症です。下記の症状が現れたら直ちに応急処置を行いましょう。症状が改善しているようならば、現場での応急処置と見守りで構いませんが、悪化するようならばすぐに医療機関を受診しましょう。
めまい、立ちくらみ
脳への血流が瞬間的に不十分になってしまうことで、めまいや立ちくらみが起こります。熱中症によるめまいや立ちくらみは「熱失神」とも呼ばれます。
筋肉痛や筋肉の硬直・痙攣(けいれん)
熱中症では、発汗に伴い、血液中の塩分(ナトリウム)濃度が低下します。これにより起こるのが、筋肉痛や筋肉の硬直・痙攣(けいれん)です。こむら返り(ふくらはぎの筋肉が異常に収縮し、痙攣すること)を起こすこともあり、熱中症に伴うこれらの筋肉症状は「熱痙攣(ねつけいれん)」とも呼ばれます。
大量の発汗
熱中症の初期症状として、体が体温を下げようとして大量の汗を出す症状も見られます。大量の発汗により脱水が進むため、早期に適切な処置をしなければ症状が悪化してしまうおそれもあります。
中等症
意識ははっきりしていても、次の症状が見られた場合はすぐに医療機関を受診しましょう。なお、自分で水分や塩分補給ができない場合も、中等症に含みます。
集中力・判断力の低下
周囲の人が「何かおかしい」「普段と違う」と感じたら、医療機関を受診しましょう。意識があっても、脳血流の低下が疑われるためです。
重症
体温が40℃以上になり、すぐに救急車を要請すべき状態です。場合によっては集学的治療が必要になることもあります。
意識障害・痙攣・手足の運動低下
重症では、脳血流の低下や脳内の温度が上昇したことで、脳機能不全による症状が見られます。
時間や場所がわからなくなる見当識(けんとうしき)障害がある場合は、重症に分類され、早急な入院治療が必要です。まっすぐ歩けない、立ち上がれないなどの小脳症状が出現することもあります。
最重症
深部体温が40℃以上かつ意識レベルが低い(GCS≦8)場合は、早急にActive Cooling(積極的な冷却)を含めた集学的治療が必要な状態です。
4.熱中症による頭痛を防ぐには?心がけたい予防法

熱中症による頭痛は、事前の対策で十分に防ぐことができます。「まだ大丈夫」と過信せず、日頃からの予防意識が何よりも大切です。
熱中症は屋外や炎天下だけでなく、空調の弱い屋内でも発症するリスクがあります。しっかり対策して熱中症を予防しましょう。
暑さ対策
外出時は日陰を歩く、帽子や日傘を活用するなどの対策が効果的です。服装も通気性の高い綿や麻素材、襟ぐりや袖口のあいている熱がこもりにくいデザインのものを選ぶと良いでしょう。
家の中の暑さ対策も忘れてはいけません。ブラインドやすだれを使って、直射日光を遮りましょう。夏場の暑さ対策として、エアコンの使用は推奨されますが、冷やし過ぎには注意が必要です。
また、日ごろから運動などで汗をかき、ある程度の暑さや発汗に体を慣らしておくことも大切です。ただし、急に気温が上がった日などは体が対応できない恐れがあるため、要注意。極力外出を控えるなど、適切に対応しましょう。
こまめな水分補給
体内の水分や塩分が失われることにより、さまざまな症状が出現する熱中症。のどが渇いていなくても、定期的に水分補給をすることで、熱中症を予防できます。特に高齢の人は自覚症状がないことも多いため、注意が必要です。
水で水分補給しても構いませんが、1リットルの水に対して1~2グラムの食塩を加えた食塩水、スポーツ飲料などの方が望ましいとされています。一方、カフェインを含むお茶やコーヒー、アルコール飲料は利尿作用があるため、水分補給には適していません。
十分な睡眠の確保
睡眠不足や疲労の蓄積は、自律神経の乱れを引き起こし、体温調節機能を低下させます。その結果、熱中症を発症しやすくなり、頭痛などの症状を引き起こす可能性が高まります。
暑さで寝苦しい夜は、エアコンのタイマー機能を活用したり、朝までつけっぱなしにしたりして、快適に眠れる室温(26~28度程度)と湿度を維持してください。夜間の熱中症も非常に多いため、寝る前の水分補給も忘れないようにしましょう。
5.熱中症による頭痛が疑われる場合は、早期に適切な対処を
熱中症による頭痛は、体内の水分や塩分が失われ、脳の血流が変化することで起こる危険なサインです。「たかが頭痛」と軽視せず、症状が現れたらすぐに涼しい場所へ移動し、体を冷やして適切な水分・塩分補給を行ってください。
万が一、意識が朦朧としている場合は躊躇なく救急車を呼ぶことが肝心です。そして最も大切なのは、日頃からの暑さ対策や水分補給、十分な睡眠による予防です。正しい知識と早めの行動で自らの体を守り、熱中症のリスクを未然に防ぎましょう。

